パナソニック インダストリーは9月13日、これまで熟練者に依存していた、産業機器における高精度な動作位置調整作業を自動化するため、2種類のAIを搭載したサーボシステム「MINAS A7」を製品化し、2024年1月より国内で販売を開始したのち、順次グローバルへと展開することを発表した。

  • パナソニック インダストリーが発表したサーボシステムの新製品「MINAS A7」ファミリー

    パナソニック インダストリーが発表したサーボシステムの新製品「MINAS A7」ファミリー

熟練者に依存していた精密な位置決め作業を自動化

デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む製造業の現場では、産業機械の動きを制御するサーボシステムの自動調整技術が進歩している。しかし、半導体製造装置や電子部品実装機などといった超精密な位置決め性能が求められる装置に対しては、既存の自動調整では満足な精度を得ることはできておらず、超高精度の動作調整作業については、未だに熟練エンジニアによって手動で行われているという。

熟練者による手動での位置決めでは、理想的な動作を機械によって再現するため、100以上のさまざまなパラメータを変更しながら調整を行う。しかしこの作業では、移動距離のわずかなずれや停止時の振動による動作効率の低下を極限まで削減する必要があるうえ、運搬対象物の重さや移動方向、個々の装置の特性などによって性質が異なるため、その都度調整を行う必要があったとする。

  • サーボシステムは、運搬物や移動方向、装置の大きさなどのさまざまな要因を加味したうえで調整を行う必要がある。

    サーボシステムは、運搬物や移動方向、装置の大きさなどのさまざまな要因を加味したうえで調整を行う必要がある。

また昨今では、半導体・電子部品の微細化に伴う位置決めの高精度化に加え、生産性向上を実現するための動作速度の加速、変種変量に対応するための柔軟性、グローバルな生産体制で一貫した品質基準を満たす必要性など、さまざまな要求が顕在化しており、熟練者の育成や技術継承による対応では限界が見えていたという。

そこでパナソニック インダストリーは、熟練者に依存していた精密な位置決め作業を自動化・効率化するため、AIによる自動調整機能の実現を目指したとのこと。そして今般、サーボシステムの新世代品としてMINAS A7の商品化に至ったとしている。

ブレイクスルーは調整の指針を決めるAI

アンプ・モータ・制御ツールからなる新サーボシステムは、その最大の特徴として、パナソニック インダストリーが独自開発したAI技術を活用した緻密な自動調整機能「precAIse(プリサイズ) TUNING」を持つ。同機能の搭載により、熟練者の能力に依存していた産業機器の精密な動作調整を自動化することが可能となる。

同機能は、2種類のAIを活用したもの。まず、各種センサ情報から装置の特性を把握するAIによって、調整の指針を決定する。これにより、装置に対する前提知識を持たないAIでも調整の効率化が可能になるという。そして次に組み合わせ最適化アルゴリズムを搭載したAIを用いて、最適なパラメータへと調整していくとする。システムの開発を担ったパナソニック インダストリーの楠亀弘一氏によると、新製品の強みは前者のAIを搭載したことだといい、「装置の特性を見極めて指針を決めるAIを開発できたことで、調整に要する時間を短縮することができている」と話す。

  • 新システムの開発を担当した楠亀弘一氏

    新システムの開発を担当した楠亀弘一氏

従来型の調整と新機能による調整を比較した場合、1時間に数十回の試行が限界となっていた前者に対し、後者では1000回/1時間もの調整・テストが可能となる。これは、丸1日から数日、長ければ1週間かかっていた作業を数時間で完了できるほどの性能だといい、高速性で大きな価値を発揮するとしている。

またそのテストの際、人間では数件分のテスト履歴を記憶するので精一杯である一方で、AIを活用した場合には最大数万回の履歴を考慮した調整が可能となるなど、より正確な動作の実現に寄与できるとする。また人手を直接必要としない新システムの場合、どこからでも調整作業が可能になり、何度でもすぐに調整できる点も効率化につながるメリットだとしている。

パナソニック インダストリーによると、precAIse TUNINGの性能について、位置決め性能の指標となる位置決め整定時間は対熟練者比で約45%の削減、調整に要する人の作業時間は90%以上の削減になるとした。

  • 従来の熟練者による調整(左)とprecAIse TUNINGによる調整(右)の比較。

    従来の熟練者による調整(左)とprecAIse TUNINGによる調整(右)の比較。高速性・記憶力・対応力の面で後者が強みを発揮するとしている。