JSRは8月7日、2024年3月期第1四半期(2023年4~6月期)の決算概要を発表した。

それによると売上高は前年同期比9%減、前四半期比11%減の850億円。営業損益も、前年同期比の73億円の黒字、前四半期の29億円の赤字から61億円の赤字となり、最終損益も26億円の赤字を計上した。

同社では、半導体市場の需要減退に伴い、主力の半導体材料が前年同期比14%減と振るわなかったためと説明している。その内訳としては、販売数量の大きいArF液浸露光装置向けレジストの売上高が前年同期比1割減となったことが大きいという。また、前四半期比では、EUV露光装置用レジストが35%減、CMP材料が10%減となったほか、成長の柱と位置づけるライフサイエンス事業も在庫評価損を計上した結果、赤字になったとしている。

  • JSRの2023年4~6月期決算におけるデジタルソリューション事業の主要製品の売上高に対する前年同期比および前四半期比の増減率

    JSRの2023年4~6月期決算におけるデジタルソリューション事業の主要製品の売上高に対する前年同期比および前四半期比の増減率 (出所:JSR IR資料)

JSRは日本半導体材料業界再編の中心になれるか?

産業革新投資機構(JIC)の完全子会社「JICキャピタル(JICC)」が、JSRを約9000億円で買収する予定だが、その背景には日本の半導体材料業界の再編による産業全体の強化があるとされている。

しかし、それぞれの日本企業がそれぞれの強みを持つ分野で存在感を示しており、半導体需要が低迷する中にあっても黒字を維持する企業もいることから、同業他社が赤字を計上しているJSRに同調する見込みは低いのではないかと語る半導体材料業界関係者もいる。

また、こうした日本の半導体材料業界再編機運の高まりに対し、例えばフォトレジストの原材料であるモノマーで世界シェアの6~7割を有する大阪有機化学工業の安藤昌幸社長はロイターのインタビュー記事にて、競争力の強化に必要なのは規模ではなく技術力と、再編に否定的な考えを示している。果たして、日本の半導体材料業界は再編が進むのか、今後の各社の動きに注目である。