大王製紙は6月21日、東北大学と東京大学(東大)、産業技術総合研究所(産総研)の3者と共同で植物由来のCNF(セルロース・ナノ・ファイバー)を利用する半導体材料の研究開発を始めると発表した。「CNFベースの半導体材料の実用化を図る先進的な研究開発を、東北大など3者と始める」と説明している。

  • NEDO 先導研究プログラム/新技術先導研究プログラム

    NEDO「NEDO 先導研究プログラム/新技術先導研究プログラム」の枠組み

今回の共同研究開発の公表は、このほど経済産業省(経産省)傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の先導研究プログラム/新技術先導研究プログラムの1テーマに、大王製紙など4者が共同で提案した研究開発テーマが採択されことを契機に、その研究開発を始めることを公表したもの(注1)。

注1:NEDOの先導研究プログラム/新技術先導研究プログラムは、本格的な研究開発に進む先導的な(野心的な)研究開発テーマを選び、1年から2年間程度で研究開発を実施する研究開発制度である。先導研究プログラム/新技術先導研究プログラムに選ばれた研究開発テーマは、終了後にその研究開発成果を評価され、続けるかどうかを審査される

大王製紙は、新材料であるCNFの性能をこれまでにも追求し、樹脂などとの複合材料化を図るなどの事業化を図ってきた(注2)。

注2:大王製紙は、主に京都大学が研究開発を進めてきたCNFの成果を基に、その事業化を図るために、CNF水分散液パイロットプラント(150t/年)、同乾燥体パイロットプラント(63t/年)、同複合樹脂パイロットプラント(100t/年)の3つのパイロットプラントを三島工場(愛媛県四国中央市)に設けている。

今回、CNFの半導体材料化を図る研究開発のシーズは、東北大未来科学技術共同研究センター(NICHe)の福原幹夫リサーチフェローの研究グループが進めてきたもので、植物由来のCNFから作成したアモルファスシートにn型半導体の性質を示す部分があることを数年前に発見していた。この研究開発成果は2023年1月10日に東北大の研究成果プレスリリースとして再度、これまでの研究開発成果を整理して公表された(注3)。

注3:東北大が2023年1月10日に公表したCNFの半導体系の研究開発成果

今回、大王製紙は共同研究先として、東北大未来科学技術共同研究センターの橋田俊之特任教授グループ、東京大学農学生命科学研究科の磯貝明特別教授グループ、産総研機能化学研究部門セルロース材料グループの榊原圭太長グループの3者と共同研究を進めると公表した。

東大の磯貝特別教授も日本では長年、CNF利用を研究開発してきた研究者して、活躍してきた人物だ。また、産総研機能化学研究部門セルロース材料グループは産総研が日本発の研究開発成果であるCNFの実用化・事業化を進める研究開発拠点として、中国センター(広島市)に設けられた組織である。