経済産業省(経産相)は5月23日、「輸出貿易管理令別表第一及び外国為替令別表の規定に基づき貨物又は技術を定める省令の一部を改正する省令等の改正の概要について」という文書を公布した。外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく貨物等省令の改正を行い、いままでパブリックコメントを求めてきた先端半導体の製造装置など23品目を輸出管理の規制対象に加えることが正式に決まった。2カ月の周知期間を経て、2023年7月23日に施行される。
日本は外為法に基づき、武器など軍事向けに転用できる民生品の輸出を管理しており、それに先端半導体製造関連の23品目が加わることになった。輸出には経産省の事前の許可が必要になるが、軍事向けの恐れがあると判断されれば許可はされない見通しとなる。
特定の国や地域を規制対象として名指しはしていないと経産省は述べているものの、追加される23品目は友好国など42カ国・地域向けを除いて個別許可が必要になり、そこに含まれていない中国への輸出は事実上きわめて困難になる。
中国商務省は日本の輸出規制について「日中両国の経済・貿易協力関係および両国の企業利益を毀損し、産業サプライチェーンの安定に影響を及ぼす」とし「中国は対応措置を取る権利があり、国家の正当な権益を保護する」と述べ、WTOに提訴するだけではなく、日本に対する報復措置を辞さない構えである。中国の半導体業界は、経産省による今回の規制強化については、米国による半導体の輸出規制よりも大きな打撃になりかねないと見ており、EUV露光装置はじめ半導体製造装置の国産化の取り組みを強化する可能性がある。
経産省が2019年に韓国への半導体素材輸出手続きの厳格化した際には、韓国におけるEUVレジストやフッ化水素の国産化あるいは日米企業の誘致が進んだことが半導体業界の中でも注目を集めることとなったが、それと似たような動きが中国でも起こりかねない事態と言えるかもしれない。こうした政府の動きを受けて、中国向け半導体製造装置の輸出が減少することが予想される国内大手半導体製造装置メーカーの東京エレクトロンやSCREENなどの株価は軒並み下落している。