中国の複数のメディアやSNSが「北京、ハルビン、長春にある中国の3つの研究機関のチームが協力して最先端EUV露光装置の試作機(プロトタイプ)を完成させた」と報じている。

それらによると、中国科学院の前院長である白春礼氏が、4月13日に吉林省長春市にある中国科学院付属長春光学・精密機械・物理研究所を視察し、露光装置の開発状況を確認したとするほか、数年以内にEUV露光装置の量産めども立ったとも伝えられている。しかし、中国共産党系の主要メディアは報じていない点に注意が必要である。露光性能自体は不明だが、各所の状況を踏まえると中国の複数の研究チームの協業による先端プロセス向けEUV露光装置のプロトタイプ開発は事実のようだ。

20年にわたってEUV露光の研究を行ってきた中国

長春光学・精密機械・物理研究所は、すでに2002年には中国初のEUVリソグラフィ原理確認装置を開発、0.75nm RMSよりも優れた波面収差を有する2ミラーEUVリソグラフィ対物レンズシステムの開発に成功していた。その後も研究を続け、2017年には32nmプロセス対応EUV露光装置の試作に成功。その後、5nm向けEUV露光装置の開発が行われてきた。

EUV光源は、長年にわたってハルビン工科大学で研究開発されており、現在は長春研究所と協業体制にあるという。EUV露光装置向けの超精密マスク/シリコンウェハステージは、清華大学の朱玉教授が率いるチームが2014年に開発し、長春研究所に納入したという。Huaweiの研究所も長春にあり、EUV露光装置の潜在的ユーザーとして、共同開発に参画し、開発促進に協力している模様である。

2022年、そのHuaweiが中国国家知識産権局にEUV露光装置とその主要コンポーネントをカバーする特許出願(特許出願番号202110524685X)したことが露光装置業界を中心に話題になった。この特許は、波長13.5nmのEUV光源、反射鏡、露光装置、計測技術など、EUV露光装置の重要な構成要素をすべて網羅している。

同社は、子会社HiSiliconで設計した先端デバイスの中国内での製造に向けてさまざまな開発や装置・材料メーカーへの支援を行っており、自社開発のEDAツールは、すでに7nmの検証済みだという。Zhongwei Semiconductor(英語略称:AMEC)は、5nmプロセス用のエッチング装置をすでに発売しているし、露光装置メーカーSMEEは、液浸ArF露光装置の開発を急いでおり、Nanda Optoelectronicsは193nmフォトレジストを開発している。

NAND専業のYMTCは、中国最大の総合半導体製造装置メーカーNAURA(北方華創科技集団)に装置を大量発注し、対中半導体規制の対象になっている128層以上の3D NANDの製造再開を目論むなど、中国半導体勢は米国の対中半導体規制を背景に自主開発を加速させている。同時に、海外メーカーへの中国進出も奨励している。

例えば、ASMLは4月26日開催の年次株主総会にて、「中国が外国製製造装置の調達を規制されている状況で独自の装置開発を目指すのは筋が通っている。競争相手の装置生産は当然起こり得るため、ASMLが最大の半導体市場である中国へのアクセスを維持するのは間違いなく必要不可欠だ」と述べたとロイターが報じている。