東北大学は5月19日、フェムト秒レーザを使って、炭素原子1層分の厚さを持つ2次元(シート状)物質であるグラフェンを、100nm以下の精度で加工することに成功したと発表した。
さらに、レーザ照射したグラフェンを高性能の電子顕微鏡で観察したところ、表面の汚染物が除去され、数nmの細孔や原子レベルの構造変化を生じさせられることを発見したことも併せて発表された。
同成果は、東北大 多元物質科学研究所の上杉祐貴助教、同・小澤祐市准教授、同・佐藤俊一教授、同・大学大学院 工学研究科 知能デバイス材料学専攻の門口尚広大学院生(研究当時)、同・小林哲郎大学院生、東北大 金属材料研究所の長迫実助手らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国化学会が刊行するナノサイエンスとナノテクノロジーの全般を扱う学術誌「Nano Letters」に掲載された。
グラフェンを使ったトランジスタ、透明電極、センサなどのデバイスを社会実装させるには、同物質をμmからnmのスケールで効率的に加工する技術が必要となる。μm~nmの素材加工・デバイス製造には、一般的にナノリソグラフィや集束イオンビーム法が用いられているが、これらの手法は装置が大掛かりだったり、加工・製造に長い時間を要したり、操作が困難だったりと、基礎研究・開発の現場では利用しづらいものだという。
また、グラフェンデバイスの性能はわずかな表面状態の変質によって大きく変化するため、化学的な修飾や結晶構造の大きな乱れが生じやすいこれらの手法の適用には、限界もあったという。そこで研究チームは今回、これまで開発してきた厚さ5nm~50nmのシリコン系薄膜を、フェムト秒レーザを使って微細加工する独自技術をグラフェンに適用したとする。
その結果、膜を破損することなく多点穴のパターニング加工を施すことに成功。レーザのエネルギーと照射回数を適切に制御することで、使用したレーザの波長(520nm)よりも小さな直径70nm程度の微細穴から、原理的には直径1mm以上の開口まで、自在な加工を施すことができると考えられるとしている。