経済産業省(経産省)は、5月に省令を改正して7月から輸出規制する最先端半導体製造装置など追加の23品目を3月31日に発表し、パブリックコメントを求めている。
包括許可対象の同盟国や同志国を除く国への輸出に際しては個別許可が必要となる。「特定国を対象とした規制ではない」「米国政府に追従した規制ではない」「完全な禁輸ではなく、軍事利用のおそれの有無を調査し、軍事利用でないことが明らかなら許可する場合もありうる」と西村経産大臣は記者会見で発言していたが、関係者の納得は得られそうにない。経産省によると、東京エレクトロン、ニコン、SCREEN、レーザーテックはじめ10社ほどの先端半導体製造・検査装置が規制対象になるというが「装置メーカーへの影響は軽微」(経産省)としている。装置メーカー各社は、どの自社製品が規制にひっかかるか、そして業績への影響はいかほどか精査し始めている。
しかし、省令改正案の文章は、法律文書特有の非常に回りくどい表現となっており、しかも細部に渡る技術的な条件が目立ち、一方で非先端製品まですべて含まれるようなあいまいな表現も目立ち、わかりにくいとの声があがっている。
そこで、23品目(実際には30品目以上に細分化されており、装置のほかペリクル膜も含まれる)を、プロセスカテゴリ別に分類したうえで、できる限りわかりやすく書き直してみた。なお、本記事で取り上げた品目の順序は、省令案記載の順序とは異なる。
熱処理関連(1品目)
0.01Pa以下の真空状態でCu、Co、Wのいずれかのリフローを行うアニール装置
検査関連(1品目)
EUV露光用マスクブランクスあるいはパターン付きマスク検査装置
露光関連(4品目)
- EUV露光用ペリクル
- EUV露光用ペリクル製造装置
- EUV露光用レジスト塗布・現像装置(コーターデベロッパ)
- 光源の波長が193nm以上で表した光源の波長に0.25を乗じた数値を開口数の値で除して得た数値が45以下の光学式露光装置(著者の計算では、ニコンの液浸ArF露光装置は含まれるが、ドライArF以前の露光装置は含まれない)
ドライおよびウェット洗浄関連(3品目)
- 0.01Pa以下の真空状態において、高分子残さおよび銅酸化膜を除去して銅の成膜が可能な装置
- ウェハ表面の酸化物を除去する前処理を行うドライプロセス用マルチチャンバ装置
- ウェハの表面改質の後に乾燥を行う枚葉式ウェット洗浄装置
エッチング(3品目)
- 等方性ドライエッチング装置でSiGeのSiに対する選択比が100以上のもの、および異方性エッチング装置で、高周波パルス出力電源や切替時間が300m秒未満の高速ガス切り替え弁および静電チャックを有するもの
- ウェットエッチング装置で、SiGeのSiに対する選択比が100以上のもの
- 誘電体材料のエッチング幅に対して深さが30倍を超え、かつ幅の寸法が100nm未満の形状を形成できる異方性ドライエッチング装置のうちで、高速パルス出力電源と切替時間が300m秒未満の高速切換弁を有するもの。
成膜関連(11品目)
1. 以下に示すさまざまな成膜装置
- 電気めっきでCoを成膜する装置
- CoまたはWをボトムアップ成膜によって充塡する工程において充塡する金属の空隙又は継ぎ目の最大寸法が3nm以下のCVD装置
- 単一のチャンバ内での複数の工程によって金属のコンタクト層を成膜する、水素(水素と窒素またはアンモニアとの混合物を含む)を用いたプラズマ装置で、ウェハの基板温度を100℃超・500℃未満に維持しながら有機化合物を用いてW層を製膜するもの
- 0.01Pa以下の真空状態または不活性の環境を維持することができる複数のチャンバを持って複数のプロセスを行える成膜装置で、次に掲げる全ての工程により金属のコンタクト層を成膜することができるもの。(1)ウェハの基板温度を100℃超・500℃未満に維持しながら、水素(水素と窒素又はアンモニアとの混合物を含む)を用いたプラズマにより表面処理を行う工程、(2)ウェハの基板温度を40℃超・500℃未満に維持しながら、酸素またはオゾンを用いたプラズマにより表面処理を行う工程、(3)ウェハの基板温度を100℃超・500℃度未満に維持しながら、W層を成膜する工程
- 次に掲げる全ての工程により金属のコンタクト層を成膜する装置、(1)リモートプラズマ源及びイオンフィルタを用いて表面処理を行う工程、(2)有機金属化合物を用いてCuの上に選択的にコバルトの層を成膜する工程
- 仕事関数金属のALD装置で、2つ以上の金属の供給源を有するもののうち、Al前駆体用供給源および245℃超の温度で作動する前駆体容器を有するもの
- 仕事関数金属を成膜する装置で、炭化チタンアルミニウムを成膜し、20.0eV超の仕事関数を可能とするもの - 次に掲げる全ての工程により金属のコンタクト層を成膜する装置。(1)ウェハの基板温度を20℃超・500℃未満に維持しながら有機金属化合物を用いて窒化チタン又は炭化タングステンの層を成膜する工程、(2)ウェハの基板温度を500℃未満に維持しながら、0.1333Pa超、13.33Pa未満の圧力でスパッタリングによりCo層を成膜する工程、(3)ウェハ基板温度を20℃超・500℃未満に維持しながら、133.3Pa超・13.33kPa未満の圧力で有機金属化合物を用いてCo層を成膜する工程
- 次に掲げる全ての工程により銅配線を形成する装置。(1)ウェハの基板温度を20℃超500℃未満に維持しながら、133.3Pa超13.33kPa未満の圧力で有機金属化合物を用いてCoまたはRu層を成膜する工程、(2)ウェハの基板温度を500℃未満に維持しながら、0.1333Pa超13.33Pa未満の圧力でPVD法を用いてCu層を成膜する工程
- 有機金属化合物を用いてバリヤ膜またはライナを選択的に成膜するALD装置
- ウェハの基板温度を500℃未満に維持しながら、絶縁膜と絶縁膜との隙間(幅に対する深さの比率が5倍を超え、かつ、当該幅が40nm未満のものに限る)にWまたはCoを空隙が生じないように充塡するALD装置