韓国の国会は3月30日、半導体などへの投資を促進するために企業に税制優遇措置を与えることにより、同国の半導体産業をさらに後押しする法律案「租税特例制限法の一部改正法律案」を承認した。韓国の尹大統領は法案に署名し承認する意向を示している。
韓国国会の公式ニュースによると、「K-CHIPS法」とも呼ばれる同法は、国家戦略技術の投資税額控除率を引き上げるというもので、既存の8%(大企業・中堅企業)、16%(中小企業)からそれぞれ15%(大企業・中堅企業)、25%(中小企業)に引き上げるほか、投資増加分の10%を控除する臨時投資税額控除制度も導入。これにより、大企業・中堅企業は最大25%、中小企業は35%の投資税額控除の恩恵を受けることができるようになる。適用期間は、今のところ2024年12月末までで、半導体のほか、二次電池、ワクチン、ディスプレイ、水素、モビリティが対象となる模様である。
米CHIPS法の補助金申請を躊躇する韓国半導体勢
そのK-CHIPS法の恩恵を受けるであろうSK hynixは、共同 CEOが3月29日の同社年次株主総会にて、米国のCHIPS法の補助金申請プロセスが厳しすぎると感じており、計画されている米国での先進アセンブリ工場建設への補助金を申請するかどうかまだ検討していると述べたと、韓国や台湾メディアが伝えている。工場建設そのものは計画通り実行するという。
米CHIPS法に基づく補助金提供の責任を負う米国商務省傘下の国立標準技術研究所(NIST)は、CHIPS法に基づく補助金を申請する半導体企業に対し、ウェハの生産能力、製造歩留まり、ウェハの予定販売価格およびその推移予測、長期利益計画などの詳細な財務予測情報をNISTに提出するよう求めており、SK hynixはじめ申請予定企業は、さまざまな営業秘密情報の開示要求やペーパーワークなどに翻弄されているという。
さらに米国政府は、2022年10月に対中半導体輸出規制を強化しており、補助金受給企業は10年間にわたり中国にある半導体工場への投資に制限を受けることとなる。韓国勢のSamsung、SK hynixともに中国に工場を持っており、2023年10月まで1年間の猶予期間を与えられているが、SK hynixではこの猶予が終了した後、猶予期間の延長を求める交渉を韓国政府とともに行う意向を示したという。一方のSamsungも、SK hynix同様、補助金を申請するか否かの姿勢を示していない。
日本も輸出規制品目に先端半導体製造装置を追加
日本の西村康稔経済産業相は3月31日の閣議後会見にて、最先端の半導体製造装置など23品目について、輸出規制を強化すると発表した。これにより当該製品の輸出に政府の事前許可が必要になる。23品目にはEUV関連の製造装置や、3D NAND用エッチング装置など10〜14nm以下の先端プロセス向け製造装置を含んでいる。これら23品目は友好国など42カ国・地域向けを除いて個別許可が必要になる。中国など特定国・地域を規制対象として名指しはしていないが、事実上、中国を狙い撃ちした規制であり、中国への輸出は困難となると見られ、東京エレクトロンはじめ、日本の先端半導体製造装置サプライヤの業績悪化が懸念される。
米国が先端半導体製造装置などの中国向けの輸出を厳しく制限しているが、日本もオランダとともに足並みをそろえて規制強化することにしており、省令改正に向けて3月31日からパブリックコメントの募集を開始。改正した省令は5月に公布され、7月に施行される予定である。