NTTデータは3月28日、バチカン教皇庁図書館(バチカン図書館)とともに実施した実証実験「バチカン図書館×Web3支援プロジェクト」の取り組みや成果を発表する記者説明会を開催した。
同社は2014年よりデジタルアーカイブソリューション「AMLAD(アムラッド)」を活用し、バチカン図書館とともに、希少な文化遺産を2Dおよび3Dデータ化するデジタルアーカイブに取り組んできた。現在はバチカン図書館が所蔵する文献や絵画などのデジタルコンテンツを公式サイトの「DigiVatLib」で公開している。
今回、説明のあったプロジェクトは、2023年2月20日から3月31日の期間で行っている文化活動支援の実証実験に基づくものだ。同実証実験では、アーカイブ化したデジタルコンテンツとNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)を組み合わて、コンテンツホルダーとその支援者の新たなコミュニティ構築を目標とする。
NTTデータは実証実験の結果を踏まえ、2023年度から国内および海外で同様のプロジェクトの展開を進めるとともに、Web3技術を用いたサービスの改良、および本格開発を進める方針だ。
実証実験では、オンライン上でバチカン図書館への支援者を募集し、その支援活動に対する返礼品をNFT・ブロックチェーン技術を用いて提供する「Web3 Community Platform」という仕組みを公開した。SNSにはTwitter、Facebook、Instagram、WhatsAppが選ばれた。
支援者はWebサイト上から支援の申し込みを行い、支援活動(同プロジェクトの情報をSNSでシェアすることによる認知拡大)を行うことで、バチカン図書館への支援を証明するNFTを得られる。
そのNFTを所有することにより、バチカン図書館が保有する文化遺産15点の高精細画像と、同プロジェクトのために作成された文化遺産の解説文を、特別コンテンツとしてWebサイト上で閲覧できる。2万人を超える利用者が同プロジェクトの特設サイトを閲覧し、最終的には419人が支援に参加した。
NTTデータ 社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 メタバースドメイン デジタルアーカイブ事業「AMLAD」 営業・開発課長の長谷部旭陽氏は、「所蔵品のデジタルアーカイブ化が進む一方で、バチカン図書館には『より多くのファンとの繋がりを作る』という課題があり、そこに応えるためにプロジェクトがスタートした。証明が改ぜんされずに永続的に残り、自由に活用できるNFTという先端技術を活用することで、新しいオンラインコミュニティの形を追求していく」と説明した。
同プロジェクトでは、NFTによる証明書とデジタルアセットを活用したマネタイズではなく、あくまで、NFTを活用した新しいコミュニティ形成に注力する方針だ。
今回のプロジェクト支援者が得たNFTは、OpenSeaのようなNFTマーケットプレイスにて確認することが可能だ。NTTデータではそうしたマーケットプレイスなどを通じてNFTが参照されることによる、個人や機関との繋がりの創出を期待する。例えば、アートに関心のあるユーザー同士の繋がりの創出や、企業からの特別なサービスの提供などだ。
「1対1の『線』のつながりだったものが、NFTによる証明と認証が展開するにしたがって『面』のつながりになっていくことこそ、Web3 Community Platformの目指す形だ。どこかで生まれた繋がりが、特定の企業やグループに縛られずに別のところで利用される柔軟な仕組みを実現したい」と長谷部氏は語った。
実証実験の結果、NTTデータは同プラットフォームの技術面・運用面での実現性とともに、419名のユーザーに対するアンケートやインタビューを通じて集客などの事業性を確認した。
初期事業で得られた知見を基に、2024年度以降は国内・海外を問わず、美術館・博物館・図書館といった文化・芸術分野においても同プラットフォームを展開していく計画だ。将来的には官公庁・自治体・教育・エンタメなど、他領域にも展開していくことも視野に入れ、数百億円規模の事業化を目指すという。