NTTデータはこのほど、同社のメタバースの取り組みを紹介する記者説明会を開催した。説明会では、関連する技術との違いや最新動向、同社のメタバースに関する取り組みが紹介された。

メタバースに先進的に取り組んできたNTTデータ

初めに、技術開発本部 XR/Identity エバンジェリストの山田達司氏がメタバースについて説明を行った。同氏は「メタバースはさまざまな定義が存在する」と前置きした上で、以下の共通認識が存在すると述べた。

  • 物理世界がシミュレーションされ、実世界との融合が可能なサイバー空間
  • アイデンティティを反映したアバターにより参加し、他ユーザーと空間を共有可能
  • 経済活動が存在する
  • ユーザーがアイテム、ワールドを構築可能
  • 高い没入感を持つことが可能
  • NTTデータ 技術開発本部 XR/Identity エバンジェリスト 山田達司氏

メタバースという言葉は1992年に登場したが、同社は1996年にオンライン上の仮想ショッピングモール「まちこ」のサービスを開始しており、メタバースに関して先進的な取り組みを実施してきたという。

  • メタバースの歴史とNTTデータのメタバースの取り組み

メタバース成功のカギは「XR技術とデバイス」

山田氏は、メタバースの人気が白熱しているが、XR技術とデバイスが普及のカギとなると説明した。VRデバイスはゲーム機として定着しているが、同氏は、VRデバイスの在り方を変える可能性を持つサービスとして、Metaの「Horizon Workroom」を挙げた。

「Horizon Workroom」はMetaのVR/ARヘッドセット「Oculus Quest 2」によって利用するバーチャル会議室で、自分のコンピューターやキーボードを持ち込むなど、仮想空間で働くことを可能にする。

山田氏は、Metaが今年10月に発表した「Meta Quest Pro」について、「かい字が見えるようになり、長時間の連続装着が可能になった。いよいよ実用的なXRデバイスが出てきた」と語っていた。

そして、「コンピューティングデバイスは進化の過程で、常にモビリティと没入感の向上を目指してきた。モビリティと没入感はトレードオフの関係にあるが、これを解決できるのがXRデバイス。XRデバイスはコンピューティングデバイスを大きく変える可能性を持っている」と、山田氏は説明した。

デジタルツイン、Web3、NFT

さらに、山田氏は「メタバースは20年に一度のパラダイムシフトのチェンジ」と述べ、メタバースに関わりがある技術として、「デジタルツイン」「Web3」「NFT」を挙げた。

データによるシミュレーションによる最適化を目的とした「デジタルツイン」と人による意思決定を目的としたメタバースを活用することで、さまざまな社会実験が可能となるという。

また、新しいプラットフォームであるメタバースが巨大プラットフォーマーに独占される危機感から、分散型インターネット技術であるWeb3によるメタバース実現を目指す動きがある。山田氏は、「Web3の概念が出来上がれば、Web 2.0では不可能だったことが実現できる」と述べた。

  • Web 2.0とWeb3の比較

NFTはWeb3 の考えに基づく技術だ。NFTに対しては、複数のメタバース連携におけるデジタルデータの扱いやデータの自己主権化に有効という期待がある一方、技術・制度的な課題が多く、扱うことが可能なデータも制限されると予想されるという。

山田氏は、同社としては、顧客がメタバースを利用したい時に課題を担保していきたいと述べた。「企業がメタバースに大きな投資をすることなく、安く早く小さなチャレンジをできるよう支援する。技術面と制度面の両方からサポートしていく」(同氏)