独Infineon Technologiesは3月2日、電力変換用GaNパワー半導体専業のカナダGaN Systemsを8億3000万ドルで買収し、GaNビジネスを強化すると発表した。

GaN Systemsは、2008年設立の従業員200余名のベンチャーで、スマートフォン(スマホ)やPCといった民生機器向け充電器やD級アンプ、太陽光発電向けインバータ、車載オンボードチャージャー、データセンタ向け電源などといった市場向け高耐圧GaNパワートランジスタを供給してきた。

Infineonは、2015年に米International Rectifier(IR)を買収し、IRのGaNパワーデバイス技術を獲得してきたほか、パナソニックとのGaNパワー半導体開発での協業など、シリコンやSiCに加えてGaNパワー半導体の開発・供給にも注力してきた。2022年2月には、マレーシア・クリムにGaNおよびSiCパワー半導体の新工場を建設することも発表。新工場はフル稼働すればSiC/GaN製品の売り上げが年間20億ユーロ増加する規模で、2024年後半より製品の出荷を開始する予定になっている。

GaNは、高いスイッチング周波数が特徴で、それによるより高い電力密度、より高い効率が実現でき、省エネルギー化ならびにフォームファクタの小型化が可能である。半導体市場調査会社である仏Yole Groupの調査報告書(Compound Semiconductor Market Monitor - Module 2022年第4四半期版)によると、パワーアプリケーション向けGaN市場は今後、年間平均成長率(CAGR)56%で成長し、2027年までに20億ドル規模に達することが期待されている。

なお、Infineonは今回の買収について、「GaN Systemsの買収は、比類ない研究開発資源、アプリケーションの理解、顧客プロジェクトのパイプラインによって、当社のGaNロードマップを加速させることになる。GaN Systemsの統合により、Si、SiC、GaNなど、すべての電力技術を熟知することになり、電力システム分野における当社のリーダーシップをさらに強化する」とコメントを出している。

Infineonは、積極的に買収を進めてきているほか、新工場の建設による生産能力の拡大、顧客への提案型ビジネスによるシステムとしてのパワー半導体の拡販などの合わせ技で事業規模を急速に拡大しており、日本でも存在感を増してきている。日本のパワー半導体業界も、全体としては強いとされているが、個々の企業の売り上げ規模を見ると、全体を併せてもInfineonの方が大きいという事態となっており、その対策が必要な状況となってきている。