経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2月3日、「2022年度NEDO省エネルギー技術開発賞」の受賞機関の11機関を決定し、2月1日から3日にかけて東京ビッグサイトで開催されていた「ENEX2023 第47回地球環境とエネルギーの調和展」にて、その授賞式を行ったと発表した。

この「2022年度NEDO省エネルギー技術開発賞」の「理事長賞」には、自動車用モーターの発電量を向上できる、磁石磁力可変型の可変界磁技術を開発したマツダが選ばれたほか、「優良事業者賞」には、パナソニックの「ナノソルダー実用化による製造プロセス省エネ化技術の開発」など10件が選ばれた。

この「優良事業者賞」10件の中の1つとして選ばれたのが、三菱ケミカルと日本製鋼所が共同開発したGaN結晶技術である。このGaN結晶を展示したブースには、多くの来場者が訪れ、かなりの賑わいを見せていた。次世代パワー半導体の有力候補の1つとして、GaN製半導体が期待されているからだ。ENEX2023で展示されたGaN結晶は、世界最大級の4インチ(約100mm)品となっていた(図1)。

  • 4インチGaN結晶

    図1 ENEX2023の三菱ケミカルと日本製鋼所の展示ブースに展示された4インチGaN結晶 (NEDO資料から引用)

三菱ケミカルと日本製鋼所は、高温・高圧のアンモニア(NH3)雰囲気中で4インチGaN単結晶を育成する圧力容器設備を日本製鋼所子会社の日本製鋼所M&E(北海道室蘭市)に設けて、2022年からの市場供給を目指してきた。元々、日本製鋼所は人工水晶製造向けのオートクレープ(圧力容器)を製造しており、今回はこのオートクレープ装置を基に開発したもの。

このオートクレープ内では、GaN結晶をつくるアンモニア(NH3)を超臨界状態で供給するSCCAT法によってGaN結晶を育成する。このSCCAT法によるGaN結晶の育成法は、東北大学 多元物質科学研究所の秩父重英教授グループとの共同研究によって、低圧酸性アモノサーマル(Low-pressure acidic ammonotherma=LPAAT)法を用いたGaN結晶成長法によって実用化された。「高温・高圧の超臨界流体中に溶解させて、炉内の温度勾配に応じた溶解度差を利用して種結晶上に溶質を再結晶させるソルボサーマル法の一種の方法だ」と、多元物質科学研究所の秩父教授はいう。

この共同研究は、NEDOの「低炭素社会を実現する次世代パワーエレクトロニクス プロジェクト(JPNP10022)」と「戦略的省エネルギー技術革新プログラム (JPNP12004)」によって助成されたものだ。

なお、三菱ケミカルと日本製鋼所の展示ブースで聞いたところによると、両社はGaN結晶の応用を研究開発している名古屋大学 工学研究科電子工学専攻の天野浩研究室とも共同研究中だという。天野教授は未来エレクトロニクス集積研究センター(CIRFE)のセンター長として応用研究を進めており、トヨタ自動車やデンソーなどとの共同研究も精力的に実施中である。