米国半導体工業会(SIA)は、米商務省産業安全保障局(BIS)によって2022年10月7日に発表された対中半導体輸出管理規則に関して過度の規制をせぬように要請するパブリックコメントを提出したと発表し、その内容を公表した。
「米国の半導体企業は、研究開発への多額の投資やグローバル市場へのアクセスなど、イノベーションの『好循環』に依存しており、歴史的にその研究開発の規模は収益の約1/5ほどと高い割合を占めてきた。こうした巨額の研究開発費が無駄にならぬようにする最も効果的な輸出規制は、特定品目に限定したうえで、米国だけではなく多くの国々も規制に参加し、その品目が外国で入手可能かどうかの問題も含め、実施前に十分な業界の意見を取り入れるべきである」と、BISによる一方的な規制強化にくぎを刺す内容となっている。
また、「SIAとそのメンバー企業は、国家安全保障を守るために対象を絞った輸出管理が必要であることを十分に理解しているが、10月の輸出管理規則はその範囲と詳細において前例のない厳しいものであり、世界の半導体エコシステムに新たな課題を生み出している」とし、SIAはこの新たに強化された輸出管理規則に関して、以下のような5項目の要望を行ったとしている。
- BISは、規制の複雑さ、不確実性、および現行と将来の規則によって生ずる不必要に有害な影響を考慮する必要がある。規制により、外国企業がサプライチェーンリスク軽減に向け、米国産またはブランドのコンテンツを自ら設計する可能性がある。特に外国企業と競合するような技術、ソフトウェア、コンポーネント、および機器を米国以外から入手できる場合、過度な輸出規制は、米国の産業基盤を損なうリスクが生ずる。
- BISは、重要な新しい規制を、まずは素案として公開することにより、通常の規則制定順序に従って、関連する技術諮問委員会および業界からの意見を求める必要がある。これにより、これらの管理の影響を受ける複雑な技術的およびサプライチェーンの問題が原因で、多くの企業が経験する意図しない結果を防ぐことができる。
- BISは、同盟国との合意により、これらのルールを多くの国々でも適用するために可能な限りのことを引き続き行う必要がある。米国だけの規制では、米国企業が不平等な競争条件に置かれるほか、同じ管理下にない国際的な競争相手が研究開発の取り組みに投資し、それによって影響を受ける(米国)企業を打ち負かすことが可能となり、米国の技術的リーダーシップを脅かす可能性もある。
- BISは、中国で操業している4つの多国籍半導体ファブに対して一時的な一般ライセンス(米国製あるいは同盟国製先端半導体製造装置を輸入する許可証)を発行する必要がある。このアクションにより、不確実性が大幅に軽減され、半導体製造装置メーカーはより効果的な事業計画が可能になる。
- BISは、対象となる開発または生産に従事する半導体製造施設の肯定的な(その施設への輸出が可能であることを明らかにした)リストを発行する必要がある。このようなリストを作成することで、企業のコンプライアンスの負担が軽減され、市場への平等なアクセスが保証される。
日本の観点から見ると、少なくとも3つ目の要望はSIAの勝手な言い分のように映る。つまり、米国政府が米国企業だけ規制すると米国企業だけ売り上げが減り、他国企業の売り上げを伸ばすこととなるのだから、同盟国の企業たちにも同様の規制を適用させよという主張であるが、すでに、こうした交渉が米日蘭の3か国政府間で進められている模様である。