残すところわずかとなった2022年。産業界は、コロナ禍から脱却し、日常を取り戻すべく、活発な動きを見せた。その最たる分野が「半導体業界」だろう。TECH+のテクノロジーチャンネルでも、さまざまな半導体業界に関する話題が、多くの人に読まれた。

2022年の半導体業界に関する注目はどういったものであったか、TECH+のテクノロジーチャンネルでこの1年、もっとも読まれた記事10本を紹介する。

1位は米国の対中輸出規制強化に関連する話題。YMTCが米商務省のエンティティリストの前段階である未検証リストに記載されたことを受け、米国半導体製造装置メーカーが同社に派遣しているエンジニアを一斉に引き上げさせる動きを見せているという話題。その後、YMTCは232層の3D NANDを他社に先駆けて商用販売を開始していることが判明したほか、12月15日(米国時間)には米商務省がエンティティリストに追記することを発表](https://news.mynavi.jp/techplus/article/20221216-2539008/))。こうした一連の動きを踏まえ、TrendForceは、YMTCが2024年までにNAND市場から撤退する可能性を指摘している

2位、3位、7位は半導体製造装置メーカーの売上高ランキング。半導体メーカーの立ち位置としては、40nmプロセスで先端ロジック生産を止めたこともあり、日本のシェアは年々減少してきた一方で、そうした半導体の製造現場を支える製造装置や材料メーカーは、さまざまなプロセス分野で強みを示し続けてきた。2022年も、その強さは健在で、半導体製造装置市場が過去最高額を更新することが期待される中、どこまでその存在感を示すのかが注目される。ただし、2023年の市場は一転、前工程、後工程ともにマイナス成長が見込まれており、総額で前年比16%減の912億ドルとSEMIでは予測している(それでも2020年が700億ドル程度で過去最高とされていたころに比べると、各段に高い数値ではある)。

そのほかの話題としては、生産能力ならびに半導体メーーカーの売上高ランキング、そして熊本で建設が進められているTSMCが中心となり、ソニー、デンソーも出資するJapan Advanced Semiconductor Manufacturing(JASM)に関する話題となっている。

当初、JASMはTSMCの22/28nmスペシャルティプロセスを用いて半導体の受託製造を行うことを目的にしていた(その後、12/16nm FinFETプロセスでの製造も行うことを発表)。このスペシャルティプロセスは、通常のロジックプロセスではなく、CMOSイメージセンサ、MEMS、不揮発性メモリ、RF、Analog、高耐圧、BCDなどのプロセスを指しており、発表の段階から、ソニー(正しくはソニーセミコンダクタソリューションズ)のCMOSイメージセンサが最優先と目されていたが、それをTSMCのトップが認めたとも言えること、それを後押ししたのが、ソニーのCMOSイメージセンサを長年採用してきたAppleであるという点が注目を集めることとなった(12月にはAppleのティム・クックCEOが熊本のソニーセミコンダクタソリューションズ熊本テクノロジーセンターを訪問したことも話題となった)。

  • IMX500

    ソニーセミコンダクタソリューションズのCMOSイメージセンサ。SoCに用いられるいわゆるロジックプロセスとは異なるプロセスで生産される。「IMX500/501」はAI処理機能を搭載したインテリジェントビジョンセンサで、IMX500がベアチップ品、IMX501がパッケージ品となっている

2022年は、JASMをはじめ、11月には2nm以降の先端ロジックデバイスの製造を目指すRapidusの設立が発表されるなど、日本でも久しぶりに良い意味で半導体が話題となった年と言える。

  • 2022年12月13日に開催されたRapidusとIBMの2nmプロセス技術に関するパートナーシップについての発表会での一幕

    2022年12月13日に開催されたRapidusとIBMの2nmプロセス技術に関するパートナーシップについての発表会での一幕。IBMの2nmプロセスウェハを持つのは、左がRapidusの小池淳義 代表取締役社長、右がIBM シニア・バイス・プレジデント IBM Research ディレクターのダリオ・ギル氏

そうした意味では、日本のみならず、世界的に半導体業界に注目が集まった年でもあり、業界全体が活発に動きを見せた年でもあった。一方で、長引くロシアのウクライナ侵攻、世界的なインフレ、新型コロナなど、市場を取り巻く負の側面も残されており、下半期以降は半導体市場の減速も目立つようになり、2023年も上期は停滞気味で、[回復は下期に入ってから、という見通しも出ている](https://news.mynavi.jp/techplus/article/20221215-2538150/)。とはいえ、半導体市場はこれまでもシリコンサイクルとして、好不況を繰り返してきた産業であり、ある意味、ジェットコースターとも称されるその激しいアップダウンの動きを経験してきているからこそ、想定の範囲内の市場減速は業界としては織り込み済みで、特に今回の下半期の様相は、業績としてはマイナスの数値がいろいろと各社から出てきているものの、リーマンショック時などで感じられた全体的な悲壮感という印象は薄い。当時はPCやスマートフォン(スマホ)といった、市場をけん引するアプリケーションが限られていたこともあるが、現在はPC、スマホのほか、データセンター、HPC、IoTなど、多くのアプリケーションが(市場規模の大小はあるが)半導体市場をけん引するようになってきていることで、市場全体がダメになる、という印象を薄めている点にあると言える。

2023年はいよいよ3nmが本格的に市場に出てくる年といえる。また、各国が半導体が戦略物資であるとの認識から、自国(地域)に生産拠点を構えるべく、動きを活発化させていくことが予想される。そうした、国家間での競争の激しさが増す半導体産業において、日本はどのような立ち位置を狙うのか、2023年は、その姿が恐らくはっきりと見えてくる年になるものと思われる。