TrendForceによるとNAND専業メーカーの中YMTCは、米国商務省のエンティティリストに記載されたことから、2024年までに3D NAND市場から撤退するリスクが出てきたという。

米商務省は、米国からYMTCへの製造装置、技術、およびその他の関連商品の輸出、再輸出、および販売に関連する個々の取引をライセンス制とし、基本的に許可を与えないとしているため、米国パートナーからの製造装置や技術サポートの入手が難しくなり、しかもそれが長期化すると、YMTCはビット出荷数量を上げることが難しくなることから、3D NAND市場における同社の立ち位置は時間を追うごとに弱まっていくだろうとTrendForceでは予想している。

2023年のYMTCの供給ビット数量は7%減に下方修正

主要な製造装置プロバイダのサポートがなくなることで、YMTCは独自の3D NAND技術「Xtacking 3.0」の今後の開発に対する技術的障害に直面することになるとTrendForceは指摘している。特に128層や232層といった先端プロセスの歩留まり向上は、大きな課題となるため、TrendForceではYMTCの2023年におけるNAND供給ビット成長率を当初、前年比60%増と予測していたものを同18%減へと下方修正していたが、今回の規制により同7%減へとさらに下方修正を行った。

エンティティリストによるYMTCの生産への影響に加えて、TrendForceは、中国以外のNAND購入者がYMTC製品の採用について懸念を抱いていることも確認しているという。例えば米国のあるスマートフォン(スマホ)ブランドは、YMTCからのモバイルストレージの調達を保留しているほか、YMTCのクライアントSSDを認定しようとしていたPC OEMは、その採用プロセスを一時停止としたという。TrendForceの最新の調査では、YMTCは将来、中国本土内でのみ活動するように制限される可能性が高いとしているほか、より多層の3D NANDに向けた技術開発が妨げられることになるため、最終的にはシェア拡大機会を喪失することになるとしている。

DUV露光装置の入手も困難になる可能性

エンティティリストへの掲載後、米国政府が輸出管理規則の範囲を拡大することを選択した場合、YMTCは重要な製造装置の取得をさらに妨げられる可能性がある。例えばオランダと日本の製造装置プロバイダが米国の制裁措置に参加し、中国顧客に対するDUV液浸露光装置の販売を停止する可能性がある。

2024年までに、YMTCの競合他社は3D NANDプロセスとして200層後半を実現するとTrendForceは指摘している。一部は、300層に近い製品の製造を開始する可能性もある。逆にYMTCは技術が停滞し、徐々に競争力を失っていくことになり、同社は上場廃止を選択する可能性があるという。TrendForceは、同社が2D NANDの製造に戻るか、成熟したプロセス技術で製造されたロジックICサプライヤに変身する可能性もあるとしている。

なお、YMTCの2023年の供給ビット数量が下方修正されたことから、同年のNAND総供給ビット数も同20.2%に引き下げられた。ただし、供給量の伸びが緩やかであり、かつ需要の価格弾力性のおかげで、エンタープライズSSDの調達が回復すると楽観視しているほか、2023年下期にはNAND全体の供給がタイトになる可能性も残しており、その場合、第2四半期に価格が安定化、第3四半期に価格上昇の可能性があるとしている。