米商務省が先般発表した、米国の技術が中国の軍事的発展につながることを防ぐための措置として、米国製の先端半導体製造用装置の中国への輸出を事実上禁止するあらたな輸出規則、ならびにNAND専業の中YMTCが「エンティティリスト」一歩手前の「未検証リスト」に掲載されたことを受け、Applied Materials(AMAT)やKLA、Lam Researchなどの米国の主要製造装置メーカーが、YMTCに派遣している装置立ち上げなどに携わるエンジニアを一斉に引き揚げさせ始めたと複数の米国メディアが報じている。

オランダのASMLも同社米国子会社の従業員に中国顧客への装置販売やサービス提供を停止するよう本社から通達があったという。

今回の動きは、米国商務省産業安全保安局(BIS)による新たな対中半導体貿易規制の第7項に「Restricts the ability of U.S. persons to support the development, or production, of ICs at certain PRC-located semiconductor fabrication “facilities” without a license」という記載があるためと考えられる。日本語にすれば、米国国籍を有する者が米国商務省産業安全保安局の許可(ライセンス)を受けずに中国国内の半導体製造施設で開発や製造を支援する行為を制限するというものであり、こうしたエンジニアの引き揚げは、2018年に米国政府が、中国の新興DRAMメーカーであったJHICCをエンティティリストに記載し、米国製半導体製造装置や米国技術の輸出を禁止した際にも同様に生じており、今回も同様のことが起きている模様である。

この新たな規制を受け、AMATは10月12日(米国時間)、2022年度第4四半期(2022年10月30日期末)の業績見通しを下方修正したと発表した。それによると同社の同四半期売上高見通しは従来の66.5億ドルから約64億ドル±2.5億ドルへと下方修正したという。この下方修正の見通しは、新しい輸出規制の影響を反映したものだが、サプライチェーンのパフォーマンス改善によって部分的に相殺されているとするほか、同社では必要に応じて追加の輸出ライセンスを取得する手続きを行うとしているが、現時点では、今回の新たな輸出規制が2023年度第1四半期の売上高にも影響を与えるとの予想を示している。

このように今回の米国政府の対中輸出規制は、中国半導体企業の経営に大きな打撃を与える一方で、売り手側の米国半導体製造装置企業にも打撃を与えることとなっており、今後の動向が注目される。