業界をまたいでサプライチェーンの混乱が依然続く中、企業にとってサプライチェーンの強化は引き続き喫緊の課題になっています。こうした状況に応えるため、経営層からの高い注目、そして時には政府の施策によって、サプライチェーンのデジタル化に向けた投資が加速しています。

そこで、企業はデータを最大限に活用し、サプライチェーンの可視化と市場環境の変化への迅速な対応力を向上させたいと考えています。これらの実現には、関係者や取引先をはじめ、エコシステム内のあらゆるパートナーとの円滑な連携が不可欠であり、容易なことではありません。

本稿では、サプライチェーンにおいてコラボレーションを実現する上で、企業が抱える課題とその解決策をて3つの観点から紹介します。

求められる既存製品のモダナイゼーション

サプライチェーンが、個別活動を直線的につなぐという役割から、関係者や取引先と常につながっているデジタル・サプライ・ネットワークへと変貌を遂げる中、その連携を支援するテクノロジーがますます重要になっています。

例えば、サプライチェーンにおいては、関係者間で進捗状況をリアルタイムで把握したり、問い合わせに自動応答したりなど、APIによる機能補完が必要です。こうした関係者間の連携をより緊密に、より迅速に行うためのニーズが高まっています。これを実現する情報交換の仕組みが、EDI(電子データ交換)サービスです。

また、サプライチェーンにおけるコラボレーションにおいて、依然として電子メールや電話が利用され、時にはファックスや紙の書類でのやり取りに依存している状況です。プロセスの自動化と可視化を進めるには、こうした非構造化データによるコミュニケーションを構造化されたデータ交換に置き換える必要があります。具体的には、システムとの直接統合や、ポータルサイトやスマートフォームの利用、OCR(光学式文字認識)を活用したデータの抽出など、データの取得と処理を自動化する機能が必要です。

そこでOpenTextでは、企業が自社のサプライチェーンを段階的にデジタル化し、強化していくための「サプライチェーン高度化ステップ」を提唱しています。高度化の第一歩となる「サプライチェーンデジタル化」では、先述した非構造化データやプロセスを削減することから始め、サプライチェーン関連の業務をすべてデジタル上に移行します。

次のステップの「サプライチェーンDX」では、そうしたプロセスのデジタル化・自動化を活用し、社内・社外エコシステム全体の可視化や全体最適化を行います。このように、段階に分けて既存のプロセスを見直すことで、モダンかつレジリエント(回復力のある)なサプライチェーンを実現することができ、関係者間の円滑なコミュニケーションも可能になります。

さまざまな問題を抱えるサプライチェーン技術の「断片化」

サプライチェーンにおけるコラボレーションの大部分は、異なるシステムの統合や自動化されたデータ交換によるものです。その中で、バイヤーとサプライヤーの間のような密接で戦略的な関係においては、双方の組織のユーザーが複数のシステム上にある情報にアクセスし、共有・更新できる仕組みがますます必要になってきます。これは、業務に必要なインサイトを得るとき、設計文書にまつわるコラボレーションを行うときなど、多岐にわたる活動で求められるようになるでしょう。

しかし、こうしたサプライチェーンコラボレーションを単一のアプリケーションで行うには限界があります。サプライチェーンコラボレーションにおいて、ユーザーは複数のアプリケーションにログインして作業しなければならず、負担がかかり、生産性の低下を招いています。また、アプリケーションによっては外部ユーザーがアクセスできることもあるため、セキュリティのリスクも高まります。

こうしたサプライチェーン技術の「断片化」を改善するために、企業は社内外のユーザーを網羅するサプライチェーン情報へのアクセスを、一元的に管理する方法が不可欠となります。

単一のプラットフォームによってデータのサイロ化を回避

業務プロセスのデジタル化が進むとともに、これまでとは異なる新しいタイプのテクノロジーを活用することで、データのサイロ化が発生することがあります。データのサイロ化は、サプライチェーン情報の可視性を分断し、効率的なコラボレーションの妨げとなる原因にもなるため、これを回避する取り組みは極めて重要です。

この課題に対処するための重要なことは、サプライチェーンコラボレーションに関わるさまざまなシステムを統合するための統一されたアプローチを持つことです。エコシステム内でデータを交換するための単一のプラットフォームを活用することで、組織は複数の情報源からデータをつなぎ合わせるのではなく、一元的なビューでプロセスとその健全性をエンド・ツー・エンドで追跡することができます。

例えばOpenTextの統合プラットフォーム「Trading Grid」では、あらゆるアプリケーションやパートナーを横断して、需要計画から販売、顧客対応までのプロセスをサポートします。データの分断・サイロ化を回避して業務を横断する形で可視化することで、社内外のエコシステムの全体最適とデータの利活用が可能になります。

このように、サプライチェーンに関わる業務をデジタル化して単一のプラットフォームによってアクセスを一元的に管理することで、関係者間の円滑なコラボレーションが可能になり、セキュアでレジリエンスな体制を構築できます。

著者プロフィール

Ville Parkkinen


Ville Parkkinenは、OpenTextのBusiness Network部門のプロダクトマーケティング ディレクターとして、複雑な技術的概念を、お客様の課題に即した具体的なビジネス価値に変換することに取り組んでいます。主なソリューション分野は、サプライチェーンプロセスのデジタル化と自動化、電子請求書ソリューション、B2B/EDI 統合、データの可視化と分析、マネージド統合サービスなどです。