米国アリゾナ州フェニックスで2022年10月16-19日に開催された「2022年 IEEE BiCMOS and Compound Semiconductor Integrated Circuits and Technology Symposium(BCICTS 2022)」において、住友電気工業(住友電工)が、N極性GaN HEMTを開発したことを報告した。

GaN HEMTのゲート絶縁層にハフニウム(Hf)系の高耐熱・高誘電体材料を用いて、ポスト5G時代の無線通信をターゲットに、さらなる大容量化と高速通信向けデバイスを実現したという。

発表名は「1a.4– Challenges and Potential of N-polar GaN HEMT for beyond 5G Wireless Network」となっている。

ポスト5G時代において、通信デバイスに使用されるトランジスタは、データ伝送量の増加に対応するために、より大きな電力とより高い周波数をサポートする必要があり、GaNデバイスのさらなる高出力化、高周波化が求められている。そのため、デバイス設計の自由度を高め、リーク電流を減らせる逆HEMT構造を可能とするN極性による特性改善に注目が集まっている。

ただし、N極性結晶は、ヒロックと呼ばれる異常成長による凹凸が結晶表面に生じやすいという問題があるほか、デバイス設計上、逆HEMT構造を実現するためには、従来の半導体バリア層に代わって、ゲート電極に対するバリアとなる高品質なゲート絶縁層の開発が必要とされていた。そこで住友電工は、長年培ってきた半導体技術を生かし、ヒロックのない高品質なN極結晶とHf系絶縁膜を開発し、GaN HEMTの製作に採用したという。

なお、今回の研究は、NEDOの「ポスト5G通信システム基盤強化のための研究開発プロジェクト」の成果の一部だという。