米国商務省産業安全保安局(BIS)は10月7日(米国時間)、中国の31企業・団体を、米政府が米国製品の最終用途が軍事用か否かの確認や検証を十分に実施することができなかった輸出先を記した「未検証リスト(Unverified List:UVL)」に追加したと発表した。

このリストには、中国のNAND専業であるYMTC(長江存儲科技)が含まれていることが注目されるほか、上海科学技術大学などの教育機関、中国科学院化学研究所などの国立研究所も含まれている。このリストは10月13日(米国時間)付の米連邦官報に掲載される予定だという。

今後、該当企業の協力を得て調査を行ったうえで最終用途の確認が取れない場合や調査を拒否された場合には、米国輸出管理規則(EAR)の定める「エンティティリスト」に載せて、輸出が厳しく規制されることになる。また、疑いが晴れた場合にはリストから外される。すでに半導体メーカーのSMICやJHICC、半導体設計子会社を有する通信機器メーカーHuaweiをはじめとする半導体関連企業がエンティティリストに掲載されており、米国製品の輸出が規制されている。

連邦議員らがYMTCのエンティティリスト入りを要請

米国下院外務委員会の共和党議員であるMichael McCaul氏と共和党上院議員のBill Hagerty氏は共同で米商務省のGina Raimondo長官に「YMTCは中国人民解放軍との関係が緊密であるため、エンティティリストに含むべきである」との要請書簡を7月に送っており、それによるとYMTCは複雑な企業チャネルを通じて中国人民解放軍とつながっており、YMTCが米国の国家安全保障をさらに危険にさらすのを防ぐ必要があるとしている。

これとは別に、Charles Schmer上院院内総務(民主党)ら米国連邦上院議会の超党派議員4人は9月21日、AppleがiPhoneに搭載するNANDメモリについて、YMTCからの調達を検討していると公に認めたことに関し、Avril Haines国家情報長官宛てに書簡をおくり、その中で「YMTCと提携するいかなる決定も、それによって開発される製品の市場がどのようなものであれ、中国共産党の歪んだ不公正な貿易慣行を肯定し報いることになる。それは他国の競合他社を犠牲にし、中国企業に大きな利益をもたらすことになり、米国企業を世界的に弱体化させる」と危機感をあらわにしている。

超党派議員4人は、以下の4項目について米国政府に分析・検証を求めている。

  1. 中国共産党が、自国の半導体産業を強化・内製化し、米国や同盟国、パートナー国の半導体メーカーに取って代わる計画の一環として、YMTCをどのように支援しているのか。
  2. YMTCは、Huaweiを含むほかの中国企業による米国の制裁回避を支援する上で、どのような役割を果たしているか。
  3. YMTCは、中国の軍民融合プログラムにおいてどのような役割を果たし、人民解放軍とどのようなつながりを持っているか。
  4. AppleによるYMTC製品の調達は、米国の国家安全保障および経済安全保障にどのようなリスクをもたらし得るのか。

バイデン政権内でも、今後のMicron TechnologyやWestern DigitalのNANDビジネスの脅威となる可能性があるYMTCへの対応策が議論されていたが、これらを踏まえて、商務省産業安全保障局は、今回、YMTCをリストに追加した模様である。