韓国の通商産業資源部(日本の経済産業省に相当)は9月22日(米国時間)、米ニューヨークにて「北米地域投資申告式および投資家ラウンドテーブル」を開催し、北米地域の企業7社から総額11億5000万ドル規模の半導体ならびに電気自動車(EV)関連分野に向けた韓国への投資の約束を取り付けたことを明らかにした。
同イベントには、米国の半導体・バイオ・二次電池・新エネルギーなど先端産業分野の企業代表20余人が出席したという。
AMATやDuPont、Entegrisが韓国に研究施設を新・増設
半導体関連企業としては、半導体製造装置大手のApplied Materials(AMAT)が韓国への「半導体製造装置R&Dセンター」の新設を決めたほか、DuPontが次世代EUV用感光剤とCMPパッド、パッケージングなどの半導体素材R&Dセンターと生産施設を増設、Entegrisが半導体用特殊ガス・フィルター・CMPスラリなど半導体素材R&Dセンターの増設を決めたという。
韓国通商産業資源部によると、Lam Researchはすでに「半導体製造装置研究開発センター(KTC)」を韓国に新設済みのほか、ASMLも韓国での露光装置の組み立て調整・露光技術者トレーニングセンターの建設に関して2021年5月に韓国政府との間に投資協定を締結、2022年内にも着工予定としている。日本勢としても東京エレクトロン(TEL)が韓国の研究・サービス拠点の拡張を図っており、「4大半導体製造装置企業(AMAT、TEL、ASML、Lam)が韓国に対する投資を積極的に拡大しており、今後の半導体エコシステムとサプライチェーンの強化につながることが期待される」と韓国政府は評価している模様である。
EV関連企業も韓国に研究センターを設立へ
半導体以外の投資としては、電気自動車(EV)・バッテリー分野で、米BorgWarnerが「EVおよびハイブリッド車駆動モーターR&Dセンター」の増設を決めたほか、リチウム金属バッテリー開発会社であるSolid Energy Systemも「次世代EVバッテリーR&Dセンター」と生産実証施設の新設計画を韓国政府に申告したという。
また、カナダのノースランドパワーは韓国の南海に海上風力発電団地を造成し、再生可能エネルギー分野での投資を行うとしているほか、米国系私募ファンドのEMPベルスターは環境配慮型のコールドチェーン(低温物流)倉庫を増設することを決定したという。
韓国政府が期待する先端技術の獲得と高度人材育成
なお、韓国政府では、今回の投資誘致活動について「工場ではなく、R&Dセンターなど質的水準が高い投資が中心であり、先端技術の韓国への移転に留まらず、高度な技術人材養成にもつながる」との評価をしているという。
李長官は「今回の投資はサプライチェーン強化とカーボンニュートラルなどの政策課題と関連性が高い投資という点で意味が大きい。通商産業資源部として各企業の投資計画が成功裏に実行されるよう政策的な支援を惜しまない」と述べたとのことで、今回のイベントに参加しながらも投資申告をしなかった企業についても、政府として、先端産業および研究開発(R&D)関連投資に対するインセンティブの拡大を要請したとしている。また、李長官は、より魅力的な投資環境づくりのため、先端産業への投資インセンティブの強化、海外の投資企業に差別的またはグローバルスタンダードに合わない国内規制の改善などを積極的に推進していくことも明らかにしたという。