韓国の尹政権発足で新たに産業通商資源部長官(日本の経済産業相に相当)に就任した李昌洋(イ・チャンヤン)氏は7月21日、韓国の華城市にある半導体素材企業の東進セミケム発安工場を訪問、Samsung Electronicsと共同開発に取り組み国産化に成功したEUVレジスト製造ラインを視察した後、韓国政府が推進する「半導体超強大国達成戦略」を発表した。

  • 東進セミケムのEUVレジスト製造ラインを視察する李昌洋 産業通商資源部長官

    東進セミケムのEUVレジスト製造ラインを視察する李昌洋 産業通商資源部長官 (出所:韓国通商産業資源部広報フォトニュース)

韓国が進めようとしている「半導体超強大国達成戦略」とは?

韓国政府は、海外と比較して補助金や税制支援など投資インセンティブが不足し、半導体を国内で製造する誘因が不足していると判断している。米国は半導体施設と研究開発投資に520億ドル(約7兆円)を支援する法案を議論中で、EUも2030年までに公共・民間投資に430億ユーロ(約6兆円)を支援することを検討している。日本も半導体先端企業支援のために8000億円規模の予算を確保し、補正予算でさらに増額される見込みである。

こうした各国の動きを踏まえ、同国政府は半導体企業を積極的に支援し、2026年までに340兆ウォン(約36兆円)以上の官民投資(著者注:実際はほとんど半導体メーカー自身による投資)を達成するという目標を掲げてきた。大規模な新設・増設が進行中の平沢市にあるSamsung Electronics平沢事業所、およびSK Hynix主体の龍仁半導体工業団地(クラスター)の電力や用水など必須インフラ構築費用には国費支援を検討し、半導体団地の容積率を最大1.4倍(350%→490%)に拡大し、両社に便宜を図る動きを見せている。

韓国政府は、従来の「メモリ強国」から「総合半導体超強大国」目差すために注力しているシステム半導体の現在の世界市場シェア3%を2030年に10%まで高めるという目標を掲げており、パワー・車載・AIの3大次世代システム半導体に向けた研究開発を集中支援することとしている。具体的には、2030年までにパワー半導体には4500億ウォン、車載半導体には5000億ウォン規模、AI半導体には1兆2500億ウォンの支援を行うとしている。また国内のファブレスIC企業がグローバル企業に成長できるように「スターファブレス」30社を選定し、合計1兆5000億ウォン規模の国家予算を投入する計画だという。

素材・部品・装備分野でも、板橋テクノバレーと龍仁プラットホームシティにクラスターを構築する予定で、3000億ウォン規模の官民合同による半導体系ファンドを設立し、2023年より集中投資を行うとしており、現在3割程度の半導体素材・部品・装備(装置および設備)の国内自給率を2030年には5割まで高めることを目指すとしている。