Intelが7月22日(米国時間)に予定していた米オハイオ州の新たな半導体製造施設の起工式を延期することを決めたとWashington Postをはじめとする米国の多数のメディアがIntel広報の声明文とともに報じている。この延期決定は、米国政府が半導体製造に対する補助金支給法案の審議が停滞していることが原因だという。

IntelスポークスマンのWill Moss氏は「半導体企業に補助金を供給するCHIP法の審議は、残念ながら、Intelの期待よりはるかに遅いスピードで進行しており、いつ成立するかわからない状態である。連邦議会は、一刻も早く法案を成立していただきたい」と声明文で述べたという。

遅々として進まない議会での法案成立

2021年6月に連邦議会上院は、CHIPS法を含む、広範な米国の革新および競争を推進する法案を可決、2022年2月には同下院がCHIPS法を含む米国競争法を可決した。しかし、両院で通過した法案の内容が異なるため、下院と上院はそれぞれの法案を調整して一本化して再可決する必要がある。この作業は当初、数か月で終わると思われていたが、実際のところはまったくと言ってよいほど進んでいないという。楽観主義者は、今後数週間で完了することを望んでいるが、悲観論者は、2022年11月の選挙が終わるまで棚上げされるものとみている。

Intelをはじめとする米国のハイテク企業、半導体工業会(SIA)、電子機器製造および設計サプライチェーン業界を代表するSEMI、レモンド商務長官、バイデン大統領など、各方面からさまざまな声明や要請が議会に対し出されているが、いずれも効果を発揮できていない。今回のIntelの起工式延期も、議会への圧力をかける活動の一環とみられている。ウクライナへの武器支給法案は超スピードで可決されたが、半導体への補助金支給法案には、超党派議員により提出されているものの、反対や修正を求める議員もおり、調整に手間取っているためで、Intel同様、GlobalFoundroesも米ニューヨーク州のFab 8拡張工事を延期している。EUが推進しようとしている欧州半導体法も、EU加盟国で審議されている段階で、成立のめどはたっておらず、米国の動向を注視しているものと推察される。