東北大学は5月26日、GaN基板の量産法として開発した「低圧酸性アモノサーマル(LPAAT)法」の実用化に向けた検討を進め、使用するシード基板の品質が成長後の結晶の品質に与える影響を明らかにしたこと、ならびに高品質なシードを用いることで成長後の結晶の結晶性も良くなり、室温のフォトルミネッセンススペクトルも自由励起子再結合によるバンド端発光が支配的になるほど高純度になることを確認したことなどを発表した。
同成果は、東北大 多元物質科学研究所の秩父重英教授、同・石黒徹研究員、同・嶋紘平助教を中心に、日本製鋼所 新事業推進本部 フォトニクス事業室 窒化ガリウムGr、三菱ケミカル 技術統括本部 筑波工場 ガリウムナイトライド技術センターの研究者も参加した共同研究チームによるもの。詳細は、応用物理学会が刊行する学術誌「Applied Physics Express」に掲載された。
環境保護と持続可能な社会活動の両立のために、低消費電力、消費電力の高効率化などが求められている。GaNも、そうしたニーズを実現する次世代パワー半導体材料として、研究開発が進められている。電力制御を担う高周波パワートランジスタなど、自立したGaN基板上に作製される電子デバイス(GaN-on-GaNデバイス)向けとして市販されている多くのGaN単結晶基板では品質に課題があり、そのポテンシャルを十分に引き出せていないとされている。
秩父教授らの研究室と日本製鋼所、三菱ケミカルが共同開発したLPAAT法は、大口径のGaN単結晶基板が安価で量産可能になると期待されている技術。すでに実用化済みの、高圧の超臨界流体アンモニアを用いる酸性アモノサーマル(AAT)法と比較して半分の圧力で結晶成長が可能なため、装置構成と運転上の理由から量産に向いているとされる。そこで研究チームは今回、LPAAT法の実用化に向けてさらなる研究を進めることにしたという。