SEMIジャパンは5月24日、記者会見を開催し、「半導体不足改善に向けた装置用半導体供給確保の必要性」と題した白書を公表し、世界的な半導体不足により半導体製造装置メーカーが半導体を入手できずに製造が滞り、半導体メーカーへの納期が遅れ、半導体不足に拍車をかけているとして、製造装置メーカーへの半導体の優先供給を訴えた。もとはSEMI(米国)が公開したBlogの内容に基づくものとなっている。

長期化する半導体製造装置の納期

SEMIによると、半導体製造装置の納期長期化により、半導体工場(ファブ)の建設や生産能力の増強に影響がでているという。装置メーカー各社の情報をまとめたところ、2020年には3~6カ月だった納期が、2021年第1四半期には平均10か月に、2021年7月には平均14カ月となり、特定の装置では納期が2年を超えるものもあるという。

SEMI World Fab Forecastの2021年末のレポートによると、2020年から2024年の間にファブの新規計画および大型の拡張計画が86存在する。これは、200mmファブの生産能力の20%増、300mmファブの生産能力の44%増に相当する。日本では、300mmファブが6つ、200mmファブが2つ計画されている。SEMIは、装置納期の長期化は、これらの新工場の稼働を遅らせ、生産能力の拡張を妨げ、半導体不足の長期化を招く可能性があるとしている。

  • 2020年~2024年に生産開始予定の新規300mmおよび200mmファブの計画

    図1:2020年~2024年に生産開始予定の新規300mmおよび200mmファブの計画 (出所:SEMI World Fab Forecast 2021年12月版)

製造装置メーカーやそのサプライヤーが使用する半導体は、市場全体の1%にも満たない量であるが、製造装置は半導体の生産能力拡大に欠かせないものであるため、SEMIでは、半導体の生産能力増強を求める業界や政府関係者に対し、製造装置で使用するための半導体を確保する必要性をうったえている。

半導体製造装置による乗数効果

重要なのは、製造装置を生産するために必要な半導体はごく少量であっても、その装置が生産する半導体は大量であるという点である。SEMIによる製造装置メーカーの調査によると、1000倍以上の乗数効果があるという。例えば次なような例があるとする。

  • FPGAテスト装置の生産には一般的に約80個のFPGAが必要である。しかし、1台のテスト装置は年間32万個のFPGAをテストするので、その乗数効果は約4000倍となる。
  • プロセス装置の生産には約100個のFPGAが必要で、1台の装置は1時間あたり120枚以上のウェハを処理する。ウェハは製造工程の中で同じ装置によって複数回処理されるが、ほとんどの装置が年間に処理する半導体の個数は200万個以上であり、その乗数効果は約2万倍に達する。
  • 光学検査装置の生産には約100個の高性能サーバチップが必要であり、その乗数効果は3万倍あるいはそれ以上である。
  • MCUテスト装置の生産には一般的に約100個のFPGAが必要だが、各装置は年間1000万個近いMCUをテストすることができ、その乗数効果は約10万倍にも達する。

SEMIは、「製造装置がなければ、ファブの生産能力を増やして無数の川下産業の需要に対応することは不可能である。製造装置への半導体供給の優先順位を上げる効果は計り知れない。これにより装置の納期が短縮し、半導体の生産能力を引き上げることが可能となり、半導体不足を緩和し、投資利益率も改善することができる」と結論付けている。