半導体製造投資ラッシュのシンガポール

シンガポールは政治的安定性、人材の質の高さ、政府の支援や効率性の高さ、水や電気などのインフラストラクチャも完備という利点を備えているため、多くの半導体メーカーが投資を拡大するようになってきている。

2021年には、すでにシンガポールに半導体製造拠点を持っているGlobalFoundries(GF)が、2023年の稼働開始をめどに、40億ドルを投じて半導体工場を新設すると発表したほか、2022年2月にもUMCが新たに50億ドルを出資し、シンガポール工場を拡張する計画を明らかにしている。

TSMCも、1998年にPhilips Semiconductors(現NXP Semiconductors)と合弁会社であるSystems on Silicon Manufacturing(SSMC)を同地にて設立し、現在、200mmウェハで月産3万枚の生産能力で稼働させているが、技術的には250~110nmプロセスのレガシーファブである。SSMCは現在、TSMC39%、NXP61%の出資割合で、NXPが主導権を握っている。シンガポールの前工程ファブとしては、TSMC傘下のVanguard International Semiconductor(VIS:世界先進積体電路)がGFから買収した200mmファブもある。

また、パッケージングとテスト分野に関しては現在、ASEとXinquanがシンガポールに工場を有している。世界有数のIDMであるInfineon TechnologiesやMicron Technologyも、後工程工場を有しているほか、隣国マレーシアでも、鴻海精密工業が300mmファブの建設、Intelが後工程ファブの大規模拡張を決めており、マレー半島が、半導体前工程と後工程の両方で世界の主要基地になりつつある。

なお、TSMCは現在、台湾各地や中国南京での半導体ファブの増築、ならびに米国アリゾナ州、日本の熊本、台湾の高雄などで新工場を建設中となっているほか、欧州にも進出を検討中だと言われている。そんな中で、さらにシンガポールに半導体工場を建設する人的な余力があるかについて疑問視したり、数年後の供給過剰を心配する台湾のサプライチェーン関係者も少なくない。