ソニーの子会社であるソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)は、Appleの次世代iPhone Proに搭載される可能性が高い4800万画素(48Mピクセル)のCMOSイメージセンサの製造をTSMCに委託する模様であると台湾メディアが報じている。
Appleのサプライチェーンからの情報によるものだという。ソニーは、これまでもCMOSイメージセンサの周辺ロジックチップについてはTSMCに製造委託を行ってきたが、画素チップについては門外不出としてきており、もし製造委託が行われれば初めてのこととなる。
情報筋によると、48M画素チップは、TSMCのFab 14Bにて40nm Specialty Technologyプロセスを用いて製造され、将来的には28nmプロセスへとアップグレードされ、TSMCのFab 15Aならびに建設中の台湾高雄の新ファブ、そして熊本に建設予定のTSMC/ソニーの合弁会社JASMでも製造される予定だという。
またソニーは、TSMC Fab 15Aの22nmプロセスを用いた画像信号プロセッサ(ISP)コア搭載ロジックチップの製造委託もTSMCに対して行ったともいう。ただし、CMOSイメージセンサチップ製造の最終工程にあたるカラーフィルターフィルムとマイクロレンズの製造プロセスについては、引き続き九州にあるソニーの半導体工場で行われるという。
画質で勝負してきたApple/ソニーが方針転換か?
Appleは2015年に発売されたiPhone 6sにてリアカメラを1200万画素にそれまでの800万画素からアップグレードして以降、2021年モデルのiPhone 13まで画素数の変更はなかった。しかし、今回の動きは2022年モデルではハイエンドのProのみの可能性もあるが4800万画素へとアップグレードされるとの憶測を業界に呼んでいる。
4800万画素となれば、1200万画素のイメージセンサに比べチップサイズが大きくなる。ソニーはこの数年、積極的に増産投資を行ってきたが、需要の増加に加え、仕様のアップグレードによって生産能力が不足することから、TSMCとの協業を強化し、初めて画素チップの外部製造委託を行うことにしたものと関係者はみている。
Samsung Electronicsは画素数を引き上げることで性能有意をうたって売り上げの拡大を図ってきた一方、Appleとソニーは、画素数よりも画質重視というスタンスをとってきたが、もし今回の画素数引き上げが事実であれば、ソニーとSamsungの画素向上競争が今後繰り広げられる可能性がでてくる。
なお、JASMは、その決定報道が出る前はデンソーやルネサスも資本参画の可能性が報じられていたが、ふたを開けてみればそうした動きはなく、当初の計画通り、TSMCとソニーの商談で決まったCMOSイメージセンサとしては最先端となる28nmプロセスを活用できるスペシャルティーテクノロジーファブで、ソニーのCMOSイメージセンサ製造工場になるものと複数の業界関係者はみている。ロジックプロセスとして見ても28nmプロセスは10年以上前のレガシープロセスであり、経済産業省が狙うポスト5G通信システム構築のための先端半導体製造基盤整備は別に考える必要があることから、同省では次の一手を検討しているといわれている。