日本オラクルはこのほど、クラウド事業の最新動向に関する説明会を開催した。説明会には、取締役執行役社長の三澤智光氏が登壇し、2022年度の重点施策にあわせて、クラウド事業について説明を行った。

  • 日本オラクル 取締役執行役社長の三澤智光氏

  • 日本オラクル 2022年度の重点施策

同社は世界規模でクラウド拠点を拡大しているが、2021年10月時点で、31リージョンが稼働しており、今後1年以内に13リージョンの新設が計画されているという。すべてのデータセンターについて、2025年までに100%再生可能エネルギーで運用することを目指している。

同社のクラウドサービスは、いわゆるSaaSであるOracle Cloud ApplicationsとIaaS/PaaSであるOracle Cloud Infrastructure(OCI)から構成されている。三澤氏は、Oracle Cloud Applicationsについて、「競合はオンプレミスのアプリケーションをクラウドサービスに乗せただけのものをSaaSと呼んでいるが、オラクルは違う。Oracle Cloud ApplicationsはPure SaaSであり、フルスイートで提供している」と説明した。

Oracle Cloud Infrastructureについては、「ミッションクリティカルなシステムのクラウド化を実現する、エポックメーキングなサービスインができた」として、11月5日に発表された野村総合研究所(NRI)の導入事例が紹介された。

NRIは、自社データセンターに導入していた「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」に、投資信託の窓販業務ソリューション「BESTWAY」を移行し、2021年7月より稼働開始した。「BESTWAY」は、銀行での投資信託の販売を総合サポートする共同利用型システムで、110社以上に採用されている金融SaaS。

「Oracle Dedicated Region Cloud@Customer」は、「Oracle Exadata Cloud Service」を含むオラクルのパブリック・クラウドサービスを顧客のデータセンターで利用可能なマネージド・クラウド・リージョンを提供するもので、OCIを顧客のデータセンターで利用することを可能にする。

パートナーに関しては、NECと基幹システムのクラウド移行の加速に向けて協業を強化したほか、NTTデータ先端技術がOCI向けマネージドサービスを提供開始するなど、「ミッションクリティカルシステムのクラウド化に向けた準備が整ってきた」と、三澤氏は述べた。

  • 日本オラクルが進めるミッション・クリティカル・システムのモダナイゼーションへのロードマップ

三澤氏は、ミッション・クリティカルなシステムのクラウド化について、次のように説明した。

「ミッションクリティカルシステムのクラウド化やモダナイゼーションは難しいというのが今の論調。日本のミッションクリティカルシステムの多くを提供しているオラクルから見ても、進んでいないと思う。ミッションクリティカルシステムのワークロードは汎用的なクラウドに適していない。われわれは、まずミッションクリティカルシステムをOCIにリフトしてもらうことを提案したい」

三澤氏は、ミッションクリティカルシステムをOCIにリフトするだけで、多くのメリットが得られると訴えた。「ミッションクリティカルシステムのクラウド化によって、拡張性と柔軟性が増す。加えて、インフラとソフトウェアが従量課金制になる。クラウド化によってマネージド化されるため、運用にまつわるコストを削減できる。さらに、ミッションクリティカルシステムにおいて、パッチが適用されているものは少ないが、OCIならパッチも適用され、セキュリティホールのないミッションクリティカルシステムを動かし続けることができる。OCIなら、データベースの暗号化も自動で行われる。いったんOCIリフトして、多くのベネフィットを得たあとに、モダナイズしていくという。、正しいミッションクリティカルシステムの進化が可能になる」(三澤氏)

さらに、三澤氏は競合他社のクラウドよりも同社のクラウドがミッションクリティカルシステムのクラウド化に強い理由として、4つ挙げた。

1つ目の理由は「高速なネットワーク」だ。三澤氏は、「他社は階層型ネットワークを使っているが、この場合、レイテンシーが下がり、輻輳が生じる。これに対し、オラクルはコンピュートとストレージがダイレクトにネットワークに直結する、中間中継層がないアーキテクチャを用いているので、ネットワークが速い」と説明した。

2つ目の理由は「高速なコンピュート」だ。オラクルは、ソフトウェアの仮想化でテナントを切らずに、最下層のネットワークレイヤーでユーザーごとに切っている。これにより、ユーザーはベアメタルでオーバーヘッドがない環境を利用できるうえ、セキュリティも担保されるという。「競合他社も似たようなコンピュートリソースを作り始めているが、オラクルはすべてのデータセンターが高速ネットワークとコンピュートからできている」と、三澤氏は語った。

3つ目の理由は「高速なストレージ」だ。三澤氏は「ヒトモノカネという複雑なエンティティを集中処理するストレージこそ非常に重要。競合は処理性能が22万IOPSのデータベースを『超高速』と発表したが、われわれのストレージは2400万IOPSの処理性能を持っている。そして、高速なネットワーク、高速なコンピュート、高速なストレージを最適化しデータベースであるAutonomous Databaseも強みとなっている」と述べた。

4つ目の理由は「セキュリティ」だ。オラクルでは標準のセキュリティを高めた上で、セキュリティの自動化を図っている。三澤氏は「競合のクラウドサービスはマニュアル設定だが、これではヒューマンエラーが起きる。ヒューマンエラーをなくすため、オラクルは自動化している」と語っていた。