TSMCは10月14日、2021年第3四半期の決算説明会を開催し、その中でTSMCの日本進出に関する発表のほか、技術関連の説明などを行った。
同社の発表によると2021年第3四半期(2021年7~9月期)の売上高は前年同四半期比16.3%増、前四半期比11.4%増の4146億7000万NTドル、営業利益が前年四半期比4.0%増の1710億400万NTドル、純利益は同14%増の1562億NTドルとなった。いずれも四半期ベースで過去最高を更新したほか、同四半期の営業利益率は41.2%となり、前四半期の39.1%より上昇した。製造受託費の値上げの効果が決算の数字に出始めていると思われ、これらの結果、投資家から50%必達を迫られていた懸案の粗利益についても51.3%と、前四半期の50%より1.3ポイント増となった。
第3四半期の売上高は、好調な半導体需要に牽引された結果、月次売上高でも9月が前年同月比19.7%増と月次ベースで過去最高を更新しており、大型設備投資の効果が出始めたためだとしている。事実、同社のウェハ出荷枚数(300mmウェハ換算)は、前年同四半期比12.5%増の364.6万枚と増加が続いている。また、ウェハ1枚当たり売上高は、同3.6%増の11.4万NTドル(約46万円)となった。
売り上げの中心はスマホとHPC
最終アプリケーション別の売上高は、スマートフォン向けが最大の44%、HPCが37%を占め、この2分野だけで全体の8割を占める規模となっている。その他のIoT向けが9%、車載向けが4%となっているが、2020年第3四半期野の車載向けのシェアは2%ほどであったので、生産額は2倍以上伸びていることになる。
売り上げの過半は16nmプロセス以下の微細プロセス
売り上げをプロセス別に見ると、もっとも大きいのがPCやサーバ向けCPU、GPU、ゲーム機用SoCなどを中心とする7nmで、シェアは34%。次いでApple iPhone向けプロセッサに代表される5nmが18%、次いで16nmが13%で、この先端3プロセスで売上高の65%を占めている。特に7nm以下の売上高はApple iPhone向けSoCの納入時期という季節的変動があるものの、長期的観点からは順調に伸びている。
一方、売上高を製造委託元企業の所属国・地域別で見ると、米国が65%と過半を占めており、次いでアジア・太平洋(13%)、中国(11%)、EMEA6%、日本5%となっている。
ちなみに2021年第3四半期決算の実績値は、売上高、粗利益率とも事前のガイダンスの上限値となったが、営業利益率は上限値を超える結果となった。2021年第4四半期のガイダンスについては、売上高が154 ~157億ドル(中央値で前四半期比4.5%増)、粗利益率が51~53% (同1.4%増)、営業利益率は39~41%(前四半期期から横ばい)としている。
3nm量産は予定通り2022年後半からの開始の見通し
TSMCのC.C. Wei(魏哲家)最高経営責任者(CEO)は、3nmプロセスの量産に至るスケジュールについて次のように語っている。
「TSMCの3nm技術(N3)は、従来通りFinFETトランジスタ構造を採用し、顧客に最良の技術成熟度、性能、そしてコストを提供しようとしている。N3の開発は順調に進んでおり、HPCおよびスマホの両方をサポートする完璧なプラットフォームとなる見通しだ。そのリスク生産は2021年内に行い、量産は2022年後半に開始するスケジュールから変更はない。我々は、たくさんのN3の製造委託予約をいただき、初年度のN3の新規テープアウトがN5の時よりも多くなることを期待している」。
また、N3ファミリの拡張(Extension)版となる「N3E」も披露され、「N3Eは、製造プロセスウインドウを改善し、性能、電力消費、歩留まりの点でN3の上をいく。N3Eの量産スケジュールはN3の1年遅れとなる。つまり2023年下半期に量産を開始する。TSMCの3nm技術は、PPA(power、performance、area:消費電力、性能、専有面積)とトランジスタ技術に関して、導入時点でファウンドリ業界内でもっとも進んだ技術となる見込みである」と述べている。
なお、N3の次世代となる2nmプロセス(N2)についてはGate-All-Around(GAA)構造を採用する予定としている以外はまだ公表できる情報はないとしている。
また、日本での工場建設を発表したが、そのほかの地域での工場建設の可能性についても排除せず検討を進めているとしているほか、日本で製造を予定している28nmについては汎用プロセスではなく、競合ファウンドリが提供しないようなスペシャルティテクノロジー向けであり、顧客の要求にこたえることを目的に顧客と協業するものであるため、この生産能力が増えたところで28nmプロセスの供給能力が過剰になることはないとしている。