Applied Materials(AMAT)は4月5日(米国時間)、 半導体プロセスのリアルタイム観察、ウェハ面全体や個々のチップ上の数百万か所の測定、数千におよぶプロセス変数の最適化を行うことを可能にし、半導体の「PPACt」(性能、消費電力、面積あたりコスト、市場投入までの期間)を改善することを可能とするプラットフォームである「AIx(Actionable Insight Accelerator)」を発表した。

同社のCEOであるGary Dickerson氏は「Applied is PPACt Enhancement Company」と述べており、「AIx」はそのための中心に位置するツールだとしている。

「AIx」は、同社のすべてのプロセス装置および電子ビーム計測検査装置と併用することができ、かつ研究開発から製造まで活用できるため、技術者は研究開発段階でプロセスレシピを特定し、生産移行と量産立ち上げを迅速化することができるという。

  • AMAT

    「PPACt」(性能、消費電力、面積あたりコスト、市場投入までの期間) (出所:Applied Materials 2021 Investor Meeting)

AIxプラットフォームには以下のような機能が搭載されている。

  • ChamberAI:プロセスチャンバ向けセンサと機械学習アルゴリズムで、プロセスガス、エネルギー、圧力、温度、期間などの変数をリアルタイムで分析することができるようになる。
  • オンボード計測:独自の真空内計測により、新しい薄膜のオングストローム精度での計測が成膜中に行えるようになる。
  • インライン計測:電子ビーム計測技術に基づく独自アルゴリズムにより、計測スピードを従来手法比で100倍、解像度の50%増を実現。1時間に100万以上の3Dウェハ計測値を得ることができるほか、ごく軽微なレシピ変更がオンチップのデバイスや構造にもたらす変化をナノメートル単位で評価することもできる。
  • AppliedPRO(Process Recipe Optimizer):デジタルプロセスマップを生成し、マテリアルとレシピの開発を加速させることを可能とするとともに、ばらつき低減とプロセスウィンドウの拡大を可能とする。また、個々のチャンバやツールの最適化、装置群全体のマッチングの加速にも利用できる。
  • デジタルツイン:同社製チャンバおよび装置のデジタルツインモデルが含まれており、これを用いたバーチャル実験により、レシピ開発の加速、マッチングと立ち上げ移行の改善、量産アウトプットと歩留まりの最適化が可能となる。
  • コンピューティング:AIxプラットフォームには、機械学習と AI アルゴリズムを用い て大量のデータを保存・分析するためのコンピューティングリソースが含まれている。

同社のシニアVP兼セミコンダクタプロダクトグループ ジェネラルマネージャーのPrabu Raja氏は、「PPACtの『t』(市場投入までの期間)を加速することは、業界エコシステム全体にとって最大の価値を生み出す鍵である。AIxはAMATのあらゆるソリューションを新しい形でつなぐことで、開発期間の半減とプロセスウィンドウの3割以上の改善を目指している。3年をかけて開発したAIxは、技術者にまったく新しいツールキットを提供し、ますます複雑化する半導体製造の課題解決を支援する」と述べている。

AMATが示した強気な半導体市場の見通し

AMATは4月6日(米国時間)に開催したInvestor MeetingでAIxプラットフォームを披露するとともに、中期の経営計画について説明を行った。

その中で同社は、半導体市場は2030年には現在の約2倍の1兆ドルに成長するとしているが、そのけん引役となるのは、(1)今後5年間で約25倍に増加するデータ量、(2)ハイエンドスマートフォン、自動車、データセンターサーバ、スマートホームといったアプリケーションへの半導体搭載率の上昇、(3)AIの進化と活用領域の拡大、の3点を挙げている。

半導体市場の成長に伴い、半導体製造装置市場も2020年の594億ドルから、2024年に向けて3つのシナリオを用意した。それによると、ベース(中庸)シナリオで850億ドル、ロー(弱気)シナリオで750億ドル、ハイ(強気)シナリオだと1,000億ドルとしている。メモリ向けとファウンドリ向けの市場の成長率はほぼ同じで、市場の割合も従来のようにメモリ向け45%以下、ファウンドリ/ロジック55%以上が続くとしている。 

  • AMAT

    AMATの2020年10月期の業績と2024年10月期の業績予測。:未来は不確実で予測が難しいのでロー、ベース、ハイの3種類のシナリオが示されている (出所:Applied Materials 2021 Investor Meeting)

ちなみに2020年10月期の同社の売上高は172億ドルで、半導体向けが114億ドル、サービスが42億ドル、ディスプレイ向けが16億ドルであった。2024年度の予測は、不確実性が高いため、3つのシナリオが用意されているが、ローシナリオで234億ドル(内半導体向けは162億ドル)、ベースシナリオで267億ドル(同184億ドル)、ハイシナリオで310億ドル(同217億ドル)としており、同社では半導体製造装置市場について、市場全体の伸びを上回る成長を目指すとしている。また、現在の同社はサービス事業を重視しており、今後はサブスクリプションモデルに移行するとしているが、装置市場が成長期にあるため、全社売り上げに占めるサービスの売り上げの割合は当面低下する見通しであるという。