南川氏は、電子産業および半導体産業の過去、現在、そして今後の需要に関して、同社の最新市場動向調査情報をもとに以下のように語った。

世界の電子機器市場

半導体の応用先である電子機器の世界市場は、2014年に2兆ドル規模に達し、その後も順調に成長してきたが、新型コロナの影響で2020年はマイナス成長となった。PCや携帯電話、テレビといった機器が従来は成長のけん引役だったが、これらが2020年には新型コロナの影響で成長が止まったしまった。ただし、ノートPCだけは在宅勤務や遠隔学習の恩恵で一時的に需要が伸びた。産業用や車載エレクトロニクスは2010年以降伸びてきたが、これらも2020年には成長を止めてしまった。しかし、自動車のEV/HEV化が今後急速に進むため、車載エレクトロニクスは急速に回復するだろう。産業分野もポストコロナ時代には回復し政府のインフラ整備の一環で成長するだろう。

2021年の電子機器市場は、新型コロナのショックから回復して2.5兆ドル近くまで成長し、さらに2030年の3.5兆ドル目指して成長を続けることが期待されている。

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    世界の電子機器市場の変遷(左)とアプリケーション別市場シェアの変遷(右) (出所:OMDIA、以下すべて)

世界の半導体市場

新型コロナの感染拡大による在宅勤務などの需要拡大で、データセンタや通信インフラを中心にデジタルICが伸びたが、ポストコロナ時代には様々なインフラやスマートシティ整備のためMore-than-Mooreデバイスが伸びるだろうと南川氏は指摘する。

過去2年間はデータセンタがわりと好調だったので、メモリ不足が起きた。コンピュータ関連も好調だった。一方、自動車は不振だったので車載半導体は落ち込んだ。しかし、ゼロエミッションがらみでエコカーの比率が加速しており、これにつれて車載半導体は今後伸びるだろう。また、産業機器向け投資が落ちているため、産業用半導体も落ち込んだが、ポストコロナになれば回復することが期待されるという。

今後は、通信インフラを含めてインフラ関連の投資が政府の後押しで伸びていく。このため、今後はアナログICやパワートランジスタやオプトエレクトロニクスやセンサなどのレガシー半導体の割合が増える見込みである。パワー半導体は2019/2020年に落ち込んだが、2021年には産業機器や自動車ビジネスの回復で成長を遂げると見られている。

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    世界の半導体市場の変遷(左)とデバイスタイプ別市場シェアの変遷

半導体工場の稼働率はどうなる?

半導体工場の稼働率は、新型コロナの感染拡大の影響で2020年第2四半期から第3四半期にかけて落ち込んだが、過去のITバブルやリーマンショック直後の落ち込みに比べれば軽微だった。また、第4四半期に入り、稼働率は8割を超え、2021年には9割に達する見込みである。過去の経験から、9割を超えるということは半導体の供給不足が生じることを意味しており、需給バランスがひっ迫することが予想される。

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    IDMおよび専業ファウンドリの稼働率の四半期ごとの変遷

シリコンウェハの消費面積動向

シリコンウェハの需要に関しては、2019年、2020年はほぼ横ばいか微減だったが、いよいよ2021年からは上昇が期待できるという。

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    最終用途ごとのシリコンウェハ消費面積および世界半導体市場売上高の変遷

それをけん引するのが、7/5nmプロセスの先端ロジック、15nmプロセス前後のDRAM、40nmプロセス前後の3D NANDである。そして特筆すべきは、それより大きな技術ノードのレガシープロセス(アナログ、パワー、LED、センサ、CIS)も徐々に伸びているということだという。

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    5nmから0.5μmに至る半導体微細化プロセス別半導体シリコンウェハ消費面積の変遷

全体のまとめ

最後に、南川氏は、要点を以下のようにまとめた。

  1. 米国は、新政権になっても、対中国戦略のフレームワークは変わらず、引き続期規制を行っていく。しかし、規制の方法はすこし変わるであろう。そして両国の半導体開発・製造競争は加速し始める。
  2. 四半期ごとの半導体工場稼働率から読めるように、需要と供給のバランスがひっ迫してきており、2021年には半導体の供給不足が生じる。。
  3. GAFA+Microsoftのキャッシュフローが増えすぎており、規制当局からにらまれている。これを減らすためにデータセンタの投資へ回すのが手っ取り早いので2021年にデータセンタの設備投資が大きく増えるだろう。
  4. ITリモートが普及するにあたり、既存の通信インフラは限界にきているので投資が活発になるであろう。

なお、南川氏は「このようなことが2021年に起きることが予測される」と述べて話を結んだ。