大阪大学サイバーメディアセンター(大阪大学CMC)は11月25日、スーパーコンピュータシステムの更新を行い、NECが提供するクラウド連動型高性能計算(HPC:High Performance Computing)・高性能データ分析(HPDA:High Performance Data Analysis)用スーパーコンピュータシステム「SQUID (スクウィッド:Supercomputer for Quest to Unsolved Interdisciplinary Datascience)」の運用を2021年5月より開始すると発表した。

同システムは、インテル製第3世代Xeonスケーラブル・プロセッサー(Ice Lake)を搭載した汎用計算ノード群(汎用CPUノード群)1520ノード、NVIDIA A100 Tensor コア GPUを8基搭載した「GPUノード群42ノード」、シミュレーション領域などを高速に実行するNEC製SX-Aurora TSUBASA 8基を搭載した「ベクトルノード群36ノード」、大容量データ領域20ペタバイトと高速データ領域1.2ペタバイトを提供するデータダイレクト・ネットワークス(DDN)製「EXAScaler高性能並列ファイルシステム搭載ストレージアプライアンス」を中核とした、最大理論性能16ペタフロップス超を供給可能なハイブリッド型スーパーコンピュータシステム。

NVIDIA Mellanox HDR InfiniBandネットワークによって全ノードが接続されているため、ノード間通信は超高速かつ低遅延だという。また同システムでは、計算リソース、データストレージの拡充だけではなく、利用者である研究者が必要なソフトウェア環境(ソフトウェアスタック)を動的に配備して利用できる、テーラーメイド型計算環境の提供を行う。

さらに、スーパーコンピュータをより使いやすくするために、「データ集約基盤」「セキュアコンピューティング環境」「クラウドバースティング機能」の3つのサービスを提供する。

データ集約基盤

同システムでは、ストレージアプライアンス「EXAScaler」を中核とし、クラウディアンのオブジェクトストレージ「HyperStore」と連動させたデータ集約基盤(ONION: Osaka university Next-generation Infrastructure for Open research and innovatioN)を実現する。

これにより、さまざまなデータアクセス・プロトコルに対応しつつ、データ利用の利便性を高めるとともに、クラウドサービスや他研究機関との間でデータを共有するサービスを提供することで、学内外の利用者のそれぞれが保有するデータを、研究者間で共有することが可能になるとしている。

セキュアコンピューティング環境

セキュアコンピューティング環境の提供については、NECと大阪大学CMCで研究開発を推進してきたセキュアステージング機能を用いることで、キャンパス内の他部局等に配置されたストレージ内に格納された秘匿性の高いデータを移動させることなく、同システム上の計算ノードで計算・解析することが可能になるという。

また、その計算・解析は、特定の利用者に対して計算ノード、ネットワークを動的に分離・隔離し、計算に使用するデータおよび計算実行が他の利用者には閲覧できないサービスを実現する。

クラウドバースティング機能

さらに同システムでは、オラクルのクラウドサービス「Oracle Cloud Infrastructure」およびマイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」のクラウド計算資源をオンデマンドにスケールアウトできるクラウドバースティング機能も提供する。

計算処理の一部を民間クラウドサービス上のリソースに切り替えることで、利用者にとってはオンプレミス計算環境と同じ使い方でありながら、急なリソース需要の高まりに対応することが可能になるほか、クラウドサービス上で更新され続ける新しい計算リソースが利用可能となる。

大阪大学CMCは、数値計算、科学シミュレーションといった高性能計算(HPC)分野だけでなく、機械学習やディープラーニングといった高性能データ分析(HPDA)分野からのさまざまな計算ニーズを収容できる高性能計算・高性能データ分析基盤としての新たなスーパーコンピュータシステムの提供を通じて、さまざまな研究領域、研究者を支援していく方針だ。