台湾の「中時新聞網(英語名:China Times)」が10月26日付けで、「Appleは次世代プロセッサ「A15シリーズ」の開発に着手しており、TSMCの5nm改良版プロセス『N5P』を採用し、2021年の第3四半期に生産を開始する予定だ」とTSMCの内情を知る台湾業界関係者筋の情報として伝えている。
最新世代となるiPhone 12シリーズなどに搭載されている「A14/A14Xプロセッサ」は、TSMCの5nmプロセスを採用して生産されているが、2021年に発売される予定の新しいiMac向け「A14Tプロセッサ」ならびにiMac向け自社開発GPU「Lifuka(開発コード名)」もTSMCの5nmプロセスが採用される見込みだとされている。
2020年8月に開催されたTSMCテクノロジーシンポジウムにてTSMCは、N5PプロセスはN5プロセスに比べて、同一性能の場合、消費電力が10%向上可能で、同一消費電力では性能が5%向上すると発表していた。
Appleは、同社のMac向けプロセッサをIntel製から自社設計によるTSMC生産委託に切り替えたため、AppleからのTSMCへの注文数量および金額は増える一方である。このため、2021年の5nmプロセスの最大のユーザーは、2020年に続きAppleになるのは確実だと見られている。Qualcomm、Broadcom、AMD、Supermicro、MediaTekなどもTSMCに生産委託した5nm製品を2021年に発売しようとしているため、TSMCは2021年も5nmの生産能力をフルキャパシティで維持することはほぼ確実の見通しで、米国によるHuaweiへの出荷停止規制は関係なしに、好調な業績が続きそうである。
なお、TSMCは3nmプロセス(N3)について、2021年中にリスク生産を始め、2022年第2四半期に量産する予定としており、2022年に発売されるであろうiPhoneに、同プロセスを採用したプロセッサが搭載される可能性が高い。このN3プロセスは、N5プロセス比で、同性能では消費電力を30%改善でき、同消費電力では性能を15%向上できるという。TSMCはN3プロセスの開発と前後して5nmプロセスの改良版となる4nmプロセスも提供していく予定としている。