大阪府立大学(府大)、リガク、MORESCOの3者は、異種材料接合に利用する有機ポリマー材料を用いた「多孔質エポキシモノリス層」に熱可塑性樹脂を熱溶着した接合試験片の内部および界面構造を、非破壊検査法の1つである3次元X線イメージング法を用いて直接観察することに成功したと発表した。

同成果は、大阪府立大大学院工学研究科物質・化学系専攻の松本章一教授、同・鈴木祥仁助教、同・坂田奈菜子博士前期課程2回生、リガクX線研究所の武田佳彦博士、MORESCOホットメルト事業部の小寺賢博士らの共同研究チームによるもの。詳細は、界面化学専門誌「Langmuir」オンライン版に掲載された。

近年、使用する資源とエネルギーを減らし、環境負荷をできる限り小さくすることを目的として、自動車や航空機を含む多くの分野で材料の軽量化やマルチマテリアル化が進んでいる。同時に、多様な材料を組み合わせることで従来にない秀でた機能を発揮させる複合化技術も進展しており、金属-樹脂接合に代表されるような異種材料間の接着接合のニーズが急増し、実用化に向けた応用研究が活発化している。

松本教授らの研究チームは2016年、金属と樹脂を異種材料接合する際に、エポキシ樹脂で作成されたモノリス層を界面に介在させると、金属と樹脂を直接接合する場合に比べて、接合強度が2倍から10倍も向上することを発見していた。

この結合強度の向上は、エポキシモノリスの細孔内に入り込んだ樹脂のアンカー効果によるもので、破断後に引き延ばされた樹脂断面やモノリス表面の細孔内に入り込んだ樹脂残片の形状から、新しい原理による接合方法であることが指摘され、注目を集めている。樹脂強度を高くすると接合強度が増大することも明らかにされ、エンジニアリングプラスチックを用いた高強度接合に向けての取り組みが進んでいるところだ。

しかし、モノリス表面と樹脂間での接合強度が増すほど、エポキシモノリスとガラスあるいは金属材料の被着体間での界面強度が重要になり、エポキシモノリスと被着体との界面の相互作用を高めて界面強度を高強度化する必要が出てくる。その高強度化のための材料開発や接合条件の改良には、まず界面構造を正確に知ることが重要だ。ところが、これまでの方法では破断後の表面を観察するか、あるいはランダムに切断したサンプルをあらかじめ作成して、その断面を観察して界面構造全体を類推する間接的な方法しか存在していなかったのである。

そこで研究チームは今回、観測装置として、非破壊分析法の1つである3次元X線イメージングを活用。精密な観察を行うために、微小で平坦な表面を観察できる特殊ステージを設計し、そのステージ上に接合界面を形成してX線観察を行った。その結果、エポキシモノリスの内部構造はもちろんのこと、エポキシモノリスとガラスの接合界面の詳細な構造を観察することに成功したという。

また今回の3次元X線イメージング観察によって、カップリング剤などによるガラスや金属の表面修飾が、異種材料接合の高強度化に有効に作用していることを実証することにも成功したという。

なお、研究チームは今回の研究に加え、マルチマテリアル化した複合材料を使用後に素材ごとに解体してリサイクルすることを可能にする、熱応答性ポリマーを用いた「易解体性接着技術」(使用後に材料強度を急激に低減できる新しい仕組み)の研究も並行して進めているとのことで、両技術を融合させた新しいシステムを構築するための研究も進めているとしている。

  • 大阪府立大

    (左)3次元X線イメージングによる、エポキシモノリス材料内部および界面構造の非破壊分析結果。(右)カップリング剤(GPS、APS)表面修飾による樹脂接合強度の向上(引張り試験) (出所:大阪府立大学プレスリリースPDF)

  • 大阪府立大

    通常サンプル(薄膜試料、非平坦材料)の3次元X線イメージング法の適用の際の問題点と、今回新しく設計した観察用の特殊ステージ (出所:大阪府立大学プレスリリースPDF)