キヤノンは8月5日、カメラを用いて自己位置推定と環境地図作成を同時に行う「Visual SLAM(※1)技術」を含む映像解析ソフトウエアの提供を開始すると発表した。同社は、同ソフトウエアを協業メーカーに提供することで、AGV(Automated Guided Vehicle:ガイドレス方式の次世代自動搬送台車)やAMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行搬送ロボット)に代表される移動ロボット市場に参入するとしている。

(※1):SLAMはSimultaneous Localization and Mappingの略で、自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術。Visual SLAM技術は、カメラを用いたSLAM技術。

  • Visual SLAM技術による映像解析イメージ(映像からの特徴点抽出)

  • Visual SLAM技術による映像解析イメージ(自己位置推定による移動軌跡)

Visual SLAM技術は、カメラを用いて、撮影された映像から周囲の環境の3次元情報とカメラの位置姿勢を同時に推定する。水平面・垂直面の幅広い画角で撮影されたカメラの映像データを用いるため、レイアウト変化の多い現場でも精度を保ちながら位置姿勢を計測することができる。

同社は、MR(Mixed Reality:複合現実)の技術開発で培った周囲の静止物をマーカー代わりにする空間特徴位置合わせ技術を活用することでVisual SLAM技術を含む映像解析ソフトウエアの実用化に成功したという。

移動ロボット市場参入の第1弾として、日本電産シンポが発売を開始する自動搬送台車「S-CART-V」シリーズに、同社が開発した映像解析システムを提供する。日本電産シンポは、搬送重量100kgタイプの販売を皮切りに、その他の機種についても順次、同システムの搭載を進める予定。

なお、次世代AGVの開発に際し、キヤノンと日本電産シンポの両社工場内にて2019年より試作機を運用し、信頼性を高めているとのこと。

  • 日本電産シンポ「S-CART-V」シリーズ

キヤノンは今後、Visual SLAM技術の展開をAGV・AMR分野のみならず、清掃、運搬、警備、点検、探査などさまざまな用途で活用されるサービスロボットやドローンに搭載することを目指す方針だ。