正常化が進んだ2019年第4四半期のDRAM市場

市場動向調査会社である台湾TrendForceのDRAM市場調査部門DRAMeXchangeによると、DRAMサプライヤの在庫レベルが、3四半期続いた在庫調整を経てほぼ正常なレベルに戻ったという。

2020年、DRAMサプライヤ各社はDRAM供給量を積極的に増やす姿勢をみせていないことから、DRAMのバイヤー各社は購買数量を増やす動きを見せており、その結果、2019年第4四半期のDRAMサプライヤの販売数量は増加したものの、価格の下落は続いており、全体としては前四半期比1.5%減というほぼフラットな状態に収まったという。

2020年第1四半期も、PCメーカーおよびクラウドサービスプロバイダを中心に在庫を積極的に保有しようという動きを見せていることから、PC向けDRAMおよびサーバ向けDRAMの契約価格は回復傾向にある。ただし、2020年第1四半期におけるDRAMサプライヤの出荷実績は、中国の旧正月休みなどによる季節的な影響を受ける見通しであるとTrendForceでは予想している。

利益率を上昇させたのはSamsungのみ

2019年第4四半期におけるDRAMサプライヤ各社の概況だが、トップのSamsung Electronicsはサーバ向けDRAMの出荷が伸び悩み、かつ価格も下落傾向にあったため、売上高は前四半期比5%減の67億6000万ドルに留まった。2位のSK Hynixは、価格下落を出荷数量の伸びでカバーした結果、売上高は同2.9%増の45億4000万ドル。3位のMicron Technologyも数量の増加が顕著であったことから、売上高は同2.1%増の34億7000万ドルとなった。

ただし、利益という観点ではSamsung以外のサプライヤは、平均販売価格が前四半期比で7~8%ほど下がったこともあり、利益率を上向かせることがかなわなかった。Samsungだけは、1Y-nmプロセスへの生産移行によるコスト削減に成功したこともあり、営業利益率を前四半期の33%から36%へと高めることに成功している。同社は、1X-nmプロセスでの生産したDRAMの一部に品質問題を起こし、損金を発生させていたが、この利益率の上昇により、その一部を埋め合わせることができたとしている。

SK Hynixは、1Y-nm生産への移行コストがかさんだ結果、営業利益率は前四半期の24%から19%へと低下。Micronも(同社の会計年度は9月~11月が2020年度第1四半期)、前四半期の24%から20%へと低下させる結果となった。

2020年第1四半期は、契約価格が上昇しており、DRAMサプライヤ各社の売上高も増加する可能性があるが、価格の上昇はわずかであり、営業利益率の改善はわずかにすぎないとTrendForceでは見ている。

DRAMのラインをCMOSイメージセンサに転換

Samsungは、同社のDRAM生産ラインの1つ「ライン13」でCMOSイメージセンサを生産する方向に舵を切っており、同ラインでのDRAM生産は縮小していく見込みだ。これは同社のライン11と同じポリシーによるものだと同社では説明している。

ただし、韓国 平澤(ピョンテク)工場の2番目のファブ(P2L)は、ライン13でのDRAM生産数の減少を相殺ことを目的に2020年後半にDRAMの量産を開始する計画としており、併せて同社は次世代プロセスである1Z-nmプロセスへの移行も開始するとしている。これらの取り組みの結果、2020年末における同社の総DRAM生産能力は、2019年末とそれほど変わらないもとTrendFoeceでは見込んでいる。

SK Hynixも2020年の生産計画として、ラインM10の生産品目をDRAMからCMOSイメージセンサに移行し、ラインM14でのDRAMウェハ生産に移行する計画としているほか、1Y-nmプロセスへの移行に注力するとしている。また、米中貿易戦争ならびに新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を考慮し、中国 無錫にある2つのファブについては保守的な運用を続けてきており、今後もしばらくはこうした運用を続ける見込みだとみられる。

Micronについては、子会社のMicron Memory Taiwan(旧:Rexchip)が現状、1X-nmプロセスでの生産を主力としているものの、2020年に1Y-nmプロセスをスキップして1Z-nmプロセスにアップグレードする計画を立てている。また同社のもう1つの台湾子会社Micron Technology Taiwan(旧:Inotera)も1X-nmプロセスでの生産が全体の50%以上を占めているが、これを現在、生産の約30%を占める1Y-nmプロセスへと移行させている状況にあるという。

なお、3大DRAMサプライヤ以外の台湾勢については軒並み売り上げが振るわず前四半期比で減収を記録している。中でもPowerchipは同20.7%減(自社ブランドの自社製造PC向けDRAMの売り上げ。ファウンドリとしての生産分は除く)と大きく下げている。同社はイメージセンサの需要が高まるにつれて、DRAMからCMOSイメージセンサへとウェハの生産能力を移行させており、こうした動きの影響もあるとTrendForceではみているようだ。

  • DRAMランキング

    2019年第4四半期の自社ブランドによるDRAM売上高ランキング (出所:TrendForce)