Cypress Semiconductorは3月12日、都内で記者説明会を開催し、同社の自動車向けマイコン「Traveo」の新シリーズとなる「Traveo II」を発表した。

まずは日本法人である日本サイプレス 代表取締役会長の布施武司氏(Photo01)からビジネス概況についての説明があった。

  • 布施武司氏

    Photo01:日本サイプレスの会長 兼 サイプレス・イノベイツの社長 兼 Cypress Semiconductorのシニアヴァイスプレジデントを務める布施武司氏

同社は過去4年間で概ね16%ほどの高い成長率を維持してきており、直近の2018年第4四半期で言うと、全体の36%ほどが車載関係の売り上げということになっている(Photo02)。

  • Photo02:今後5年の成長率

    Photo02:今後5年の成長率は「あくまでも市況が順調ならば」という数字との事

その車載関係のトレンドがこちら(Photo03)で、こうしたトレンドに合わせてCypressが提供している製品ラインアップがこちらである(Photo04)。

  • 車載市場のメガトレンド

    Photo03:これについては、どこの会社も同じ説明である

  • Cypressの特徴

    Photo04:Cypressはマイコン/メモリ/タッチ/USB Type-C/ワイヤレス/PMICといったラインアップを保有するベンダーであり、あくまでこの中でソリューションを提供する形となる

同社によれば、5つの分野で現在同社はNo.1のポジションにあるとする(Photo05)。

  • Traveoの使われ方

    Photo05:インスツルメントクラスタ向けマイコン、というあたりが同社のTraveoの使われ方を示している様にも思われる

TraveoからTraveo IIへの変更点

さて本題のTraveo IIであるが、ここからは同社の楠木正善氏(Photo06)により説明が行われた。

  • Photo06:楠木正善

    Photo06:自動車事業部 プロダクトマーケティング担当ディレクターの楠木正善氏

初代のTraveoはCortex-R5を利用したマイコンであるが、Traveo IIはこれをCortex-M4/M7に置き換えるという構成である。

  • Traveoの系譜

    Photo07:FR81Sは富士通、初代TraveoはSpansionの時代にそれぞれ発表されており、歴史を感じるスライドである

この理由について、そもそもトップエンドの製品では、「Cortex-M7の方がCortex-Rシリーズよりも性能が高い」という、非常に判りやすい回答だった。実際Cortex-M7は3.23 DMIPS/MHz・5.0 CoreMark/MHzの性能で、一方Cortex-R系は一番性能の高いCortex-R8でも3.77DMIPS/MHz・4.62 CoreMark/MHz、2016年に車載向けに発表されたCortex-R52では2.16 DMIPS/MHz・4.35 CoreMark/MHzと発表されており、同じ動作周波数ならCortex-M7の方が性能が上がる可能性が高い。実際Interruptの処理などでも、「Cortex-M7の方が高速」という話であった。

ただそうなると気になるのは互換性という話になる訳だが、例えばAUTOSAR OSの場合だとMCAL(MicroController Abstruction Layer)などによって抽象化されているため、ここをCortex-R5からCortex-M4/M7に置き換えるだけで良く、上位のアプリケーションには影響しないという説明であった。

ラインアップとしては今回、

  • CYT2B7シリーズ:Cortex-M4 Single/1MB Flash
  • CYT2B9シリーズ:Cortex-M4 Single/2MB Flash
  • CYT2BFシリーズ:Cortex-M7 Dual/8MB Flash

の3シリーズが提供されるが、今後は256KB Flashまで含めた広範なラインアップを用意することで「製品群を面で展開する」予定だとする。

  • Traveo IIの概要

    Phtoo08:Cortex-M4 SingleとCortex-M7 Dualでは性能差が7倍以上になるが、まだ未発表のFlash 4MBの製品群はCortex-M7 Single構成で丁度このギャップを埋めるものになるという話であった

また現状Cortex-M7ベースのCYT4BFシリーズは(ISO26262 ASIL-B対応ということからも判るように)Lock Step動作ではなく単にDual Core構成であるが、メカニズム的にはLockStepのための仕組みを内蔵しているそうで、もしASIL-Dの要件が出てきた場合は、そうした展開も(IP的には)可能、との説明だった。

ちなみに製造は40nmで、まずはUMCを利用して製造がおこなわれるが、別にUMC専属という訳ではなく、将来は他のファウンドリの可能性もある、との事であった。

また今回のTraveo IIはすべてFOTA(Firmware update Over The Air)に対応しており、特にハイエンドのCYT2BFシリーズは8MB Flashを2バンクに分割して動的にUpdate可能であるが(Photo09)、このためにインターネットとイーサネットで接続し、ここからCAN FDで車内のマイコンのファームウェアを更新するといったシナリオを考えているそうだ。

  • 外部のOTA Storageも利用可能

    Photo09:ちなみに容量が小さいファミリ向けにはeMMC/QSP/HS-SPI経由で外部のOTA Storageを利用することも可能である

  • イーサネットの扱い

    Photo10:ちなみにイーサネットは現在CYT2BFシリーズのみ搭載しているが、統合されるのはMACまでで、PHYは外部の物を利用することで、例えば1000BASE-T1への対応も可能という話であった

ところでセキュリティ関連で言えば、今回の3シリーズ(だけでなく、今後登場するシリーズも含めて)はすべてCortex-M4/M7以外にCrypto Engineを組み合わせたCortex-M0+コアを搭載している。

このCortex-M0+がSecury Domainとして動作する形になるので、TrustZoneを持たないCortex-M4/M7であっても実際にはTrustZone付きのCortex-M23/33/35Pなどよりも性能は上、というのがCypressとしての見解だそうだ。

またFOTAに絡んではeSHE(embedded Secure Hardware Extention)/HSM(Hardware Security Module)を搭載している。これらはEVITAのガイドラインに沿ったもので、eSHEはEVITAのLight、HSMはMedium/Fullの要件をカバーできるものとなっているそうである。

ちなみにターゲットはこんな具合(Photo11)で、BCM(Body Control Module)なども視野に入れつつも、基本的には個々のコンポーネントに統合されるマイコン向けを狙っていくという説明であった。

  • Traveo IIの展開イメージ

    Photo11:恐らくはCentral GatewayとかBCMがCortex-M7ベース、その他がCortex-M4ベースといった使い分けになってゆくものと思われる。Deep Sleep時の消費電流を35μAまでに抑えたことで、PEPSとかイモビライザーなどでも利用可能、とされる

Traveo IIはすでにリードカスタマへのサンプル出荷を開始しているそうで、量産出荷は2019年第4四半期を予定しているとの事。また会場ではこのTraveo IIの開発キットなども展示された(Photo12~17)。

  • Traveo II

    Photo12:パッケージはシリーズによらず共通。今のところBGAはDual Cortex-M7を搭載するCYT2BFシリーズのみ

  • Traveo II

    Photo13:100pinのCortex-M4向け評価キット。搭載されるのはCYT2B7シリーズで1MB FlashのCYT2B78CAAES

  • Traveo II

    Photo14:176pinのCortex-M4向け評価キット。搭載されるのはCYT2B7シリーズで同じく1MB FlashのCYT2B75CAAES

  • Traveo II

    Photo15:176pinのCortex-M7向け評価キット。搭載されるのはCYT4BFシリーズで8MB FlashのCYT4BF8CDAES

  • Traveo II

    Photo16:320ball BGAのCortex-M7向け評価キット。搭載されるのはCYT4BFシリーズで同じく8MB FlashのCYT4BFCCHAES

  • Traveo II

    Photo17:Traveo IIスターターキット。CYT2B7シリーズ(1MB Flash、100pin)のCYT2B95CAAESを搭載する