Googleは1月24日、都内でGoogle Cloud製品や活用事例を紹介する「“ほぼ月”Google Cloud メディアセミナー」を開催した。

自社のクラウドサービスにGCPを活用

今回、産業用ドローンとクラウドサービスを組み合わせた測量・点検サービスを展開するエアロセンスの福島県南相馬市における除染除去物保護シートの点検業務の安全・効率化について紹介された。

まず、エアロセンス 取締役 COOの嶋田悟氏は「われわれは『自動化』を軸に据えて、事業を展開している」と述べた。

  • エアロセンス 取締役 COOの嶋田悟氏

    エアロセンス 取締役 COOの嶋田悟氏

同社では、自律飛行型ドローン「AEROBO(エアロボ)」、ドローン測量を誰でも簡単にかつ正確なアウトプットを出すため、RTK精度のGPS機能を搭載した対空標識「AEROBOマーカー」、ドローンに関するデータをクラウド上で管理し、測量・点検など産業分野に対してデータ処理・解析を行うサービス「AEROBOクラウド」などを提供している。

  • 「AEROBOマーカー」の外観

    「AEROBOマーカー」の外観

AEROBOクラウドについて、エアロセンス クラウドサービス部 シニアソフトウェアアーキテクトの菱沼倫彦氏は「飛行データの管理と可視化、ドローン測量、マーカー基準点測量、シート点検などアプリケーション機能を備え、Google Cloud Platform(GCP)を活用している」と説明。

  • エアロセンス クラウドサービス部 シニアソフトウェアアーキテクトの菱沼倫彦氏

    エアロセンス クラウドサービス部 シニアソフトウェアアーキテクトの菱沼倫彦氏

同サービスの基本的なワークフローは、1)クラウド上に空撮画像データをアップロードして自動処理、2)クラウド上でフォトグラメトリ(3次元の物体を複数の観測地点から撮影し、そこから得た2次元画像から視差情報を解析して寸法・形状を求める写真測量)計算により、3次元モデルデータとオルソ画像(写真上の像の位置ズレをなくし、空中写真を地図と同じく真上から見たような傾きのない正しい大きさと位置に表示される画像に変換したもの)を生成し、オルソ画像からWeb地図を生成する。

  • ワークフローの概要

    ワークフローの概要

3次元モデルの作成は、オーバーラップを持たせた写真撮影で地物を多様な角度から撮影し、写真間で同じ地点の特徴点を抽出した上で空中三角測量の原理で3次元復元するという。

安全性と効率化が求められる保護シートの点検業務

2011年の東日本大震災以降、南相馬市では除染事業として除染および除去土壌の管理などを実施しており、除去物は通気性防水シートに覆われ、市内に設置された仮置場160カ所で保管されている。

現在、仮置場の面積は1.6平方km(1区画は1万平方m)に及ぶほか、シートまでの高さは3mあり、目視で確認することができず、保護シートの経年劣化や害獣被害による損傷を素早く検出するためにも、定期的な点検と業務の安全性向上、効率化が求められているという。

このような状況下において、同社は2015年12月に実際の現場でドローンを用いたデモ(1区画の撮影に10~20分程度、撮影枚数100~500枚)を行い、クラウド上で1枚の全景画像を生成することで高解像度画像を利用し、目視で損傷を発見できることを確認した。

ドローン測量は、対象となる現場にマーカー(対空標識)を設置し、手動で測量してマーカーの位置を計測すると同時にマーカーが含まれる画像を空撮。その後、空撮画像とマーカーで測量した位置座標を写真測量用解析ソフトウェアを用いて手動で入力し、点群モデルが生成され、現場の状況を把握する。

ここで肝となるのがマーカーで、従来はマーカーを活用するには各マーカーを人手により測量機器で計測していたほか、解析ソフトウェア上で空撮画像を1枚ずつ開き、マーカーを探し出してクリック、という作業を繰り返すため手間がかかり、ドローンで現場を空撮するだけ、とはいかなかったという。