2020年の商用化をにらみ、ITベンダーの5Gに関する取り組みが活発化している。5Gに関連する技術としては「エッジ」や「IoT」があるが、これらについても2018年は大きな動きが見られた。

ヴイエムウェアも「5G」「エッジ」「IoT」に積極的な姿勢を見せているベンダーの1社だ。サーバ仮想化製品を振り出しに、今やインフラ全体の仮想化を実現するソリューションを提供する同社だが、IoTやエッジに対しては、どのような戦略を掲げており、何を強みとしているのか。また、これらの技術は企業に何をもたらすのか。

今回、VMware 最高技術責任者(CTO)兼上級副社長を務めるレイ・オファレル氏にこれらの技術を包括する同社の戦略、5Gやエッジの広がりがもたらす世界について聞いた。

  • VMware 最高技術責任者(CTO)兼上級副社長 レイ・オファレル氏

「デバイス」と「コンピュート」から構成されるエッジの世界

同社はここ数年「Any Device,Any Application Any Cloud(あらゆるデバイス、アプリケーションをあらゆるクラウドで利用できるようにする)」というビジョンを掲げている。その基本は変わらないが、対象とするデバイスはPCやスマーフォンから、ネットワークカメラやセンサーなどIoT機器にまで広がっており、クラウドについてはエッジまで広がっている。

オファレル氏は「エッジは、いろいろな形で言葉が使われているので難しい」と述べたうえで、同社がエッジを「デバイス」と「コンピュート」の2つの世界にわけて考えていると話した。

「エッジデバイス」はセンサーなどネットワークのエンドポイントで利用されるデバイスを指し、「エッジコンピュート」はエッジにおけるデータを処理する機能を指す。

「例えば、ホテルにはエアコンの温度管理をはじめ、さまざまな機能を持つセンサーが存在する。これらのセンサーが生成するデータを迅速に処理するには、エッジにコンピュート、ネットワーク、ストレージを持つ小さなデータセンターが必要となる。これが、典型的なエッジコンピューティングだ」

オファレル氏は「こうしたエッジコンピューティングの世界を実現するために、エッジに管理とセキュリティの機能を提供する必要があると考えた」と話す。

同社はエッジデバイスを管理する製品として「」を提供している。エッジコンピュートを管理する機能として、今年開催された年次イベント「VMworld」で「Project Dimension」が発表された。「Project Dimension」はHCIアプライアンス、ハイブリッドクラウド向けの制御プレーンから構成される。

  • 「Project Dimension」の画面

エッジの課題を解決する「NSX」と「AppDefense」

またオファレル氏は、エッジに持っていきたい機能として「マイクロセグメンテーション」を挙げた。「既にNSXとSD-WANによってネットワークの管理機能をエッジに持ってきている。このように、SDNをエッジに持っていく能力があるということは、マイクロセグメンテーションをエッジに持っていることを意味する」と同氏はいう。

そして、オファレル氏は「エッジコンピュートの課題は従来のデータセンターに配置されていないことにある。店舗や自動車の内部など、フィールドにエッジコンピュートは置かれるため、ダメージを受ける可能性が高い」と指摘する。

そこで必要になるのが、「障害が発生した時にネットワークを迅速に切り離す」「挙動のおかしいアプリケーションを隔離する」といったことが行える新たなセキュリティ対策だという。こうしたセキュリティ対策を実現するのが、「VMware NSX」と「VMware AppDefense」となる。

さらに、オファレル氏はエッジについて言っておきたいこととして「エッジ to クラウドというモデルが必要であること」を挙げた。エッジデバイスで大量のデータを生成し、リアルタイムで対応が必要な時、がクラウドと通信するようになると、クラウドにデータを送信して処理していると遅延が生じてしまう。そこで、エッジでデータを処理できる仕組みとして、「エッジコンピューティング」に対するニーズが高まっているというわけだ。