Stratix 10ベースのPACカードが登場

Intelは9月25日、サーバ向けにStratix 10ベースのPACカードの提供を開始することを発表した。この発表に先立ち、インテルは9月21日に都内で「IFTD 18」を開催。これに合わせて同PACカードに関する事前説明会が開催した(Photo01)。

  • インテルの山崎大輔氏

    Photo01:説明を行われた山崎大輔氏(プログラマブル・ソリューション事業本部 データセンター&コミュニケーション統括部 事業開発マネージャー)。同氏はIFTD 18の基調講演2の後でこの説明を行われた

PACカードそのものは、2018年4月にすでに発表されているが、この時にはArria 10 GXを搭載したカードをベースに実装されていた。この記事の最後に「たとえばStratix 10などについては今のところまだ公表できる計画は無い」と書いたように、少なくともこの時点ではまだStratix 10ベースの製品の準備は整っていなかったようだが、半年足らずでこれが整った計算になる。

Stratix 10のPACとArria 10のPACの違い

さて、発表内容は4つ(Photo02)。まずStratix 10ベースのPACカードが用意できたこと、このStratix 10ベースのPACに向けたソリューションがすでにあること、データセンター向けのSolution StackがStratix 10 PACに対応したこと、Workload Store Front、それと最初のカスタマーである。これを順に説明したい。

  • Photo02:今回の発表内容は4つ

    Photo02:今回の発表内容は4つ。とはいっても、まったく新しい話というのはそれほどないのだが…

まずはPACカードそのもの(Photo03)について。

  • TDPは最大で225W

    Photo03:TDPの225Wは、GX2800のすべてのLEとDSP、メモリを使い切り、かつI/Oもフルに行うというケースで、すべてのブロックの消費電力を積み上げていくとこの位になるという話で、普通はここまではまずいかないという話であった

ベースとなるのは「Stratix 10 GX2800」で、これに4chのDDR4 DIMMを装着、最大32GBまでを搭載できる。また100G Ethernetポートを2ch実装しており、これをそれぞれ入力と出力に割り当てることでInline Processingを行うことも可能とされる。"Memory-intensive application"ということであれば、より広帯域のメモリを利用できるStratix 10 MXの方がより適していそうな気もするが、説明を行なったインテルの山崎氏によればLEの数がStratix 10 MXだと限られており(最大でも2M LE)、一方でStratix PACの(Arria 10 PACに対する)優位性はLEの数(やDSP・I/O能力)が大きい所にあるため、Stratix 10 GXが利用される、という話であった。

ちなみにそのArria 10 PACとのマーケットの棲み分けがPhoto04となる。

  • Stratix 10 PACとArria 10 PACのクロスオーバー部分

    Photo04:もちろん共通とはいっても、LEやDSP、メモリの容量などがまるっきり異なっているため、どれだけの機能を盛り込めるかというレベルで違いがある。そのため、Arria 10に最適化したものをそのまま載せても効率が悪く、Stratix 10への最適化の必要は当然ある

山崎氏によれば、Stratix 10 PACはArria 10 PACを置き換えるものではなく、補完しあう形でよりラインアップを広げる形になるとする。ここで挙げられたVideo TranscodeやStreaming Analyticsにしても、実はArria 10 PACでも実行できるのだという。ただ例えばVideo Transcodeの場合、実際の映像スタジオでのワークフローでは、4Kのストリームを複数トランスコード出来ることが必須であるが、Arria 10 PACではこれが厳しいのだという。一方Stratix 10 PACでは4Kストリームを複数同時にトランスコード可能なため、こうしたニーズではStratix 10ベースが適しているという話なのだそうだ。

APIレベルでArria 10用OPAEと共通化

次がSolution Stackの話である(Photo05)。

  • OPAEのみならずFIMもStratix 10とArriaでは異なる

    Photo05:OPAEのみならずFIMもStratix 10とArriaでは異なる模様

Arria 10 PACの時とはちょっと描かれ方が異なるが、内容としては同じである。

要するにArria 10用のOPAE(Open Programmable Acceleration Engine)とは別にStratix 10用のOPAEも用意されるが、APIレベルでは共通化されているので、その上にDeveloper ToolsやAcceleration Libraries、フレームワークやアプリケーションは共通にできるという話である。ちなみにこのスライドにもあるようにVMware vSphere 6.7 Update 1でサポートされる形になるが、現状ではVirtual Functionが1つしかない。したがって複数のVMが動作するケースであっても、1つのPACがAttach可能なVMは1つだけに限られるそうで、複数のVMでPACを使いたいという場合、VMの数だけPACを用意する必要があるそうだ。

またスライドの最上位に"Rack-Level Solutions"がある。これは要するにオーケストレーションの話であるが、Intel自身は今のところそうしたソリューションを出す予定はない。ただ9月20日にNTTアドバンスドテクノロジが発表した「世界初!OpenStackでFPGA回路のリソース管理を動作実証 ~高速なNFV仮想化環境の実現へ~」といったソリューションがすでに登場し始めており、そうしたものの活用が示された。

HPEから搭載可能サーバが提供

次がWorkload Storefrontである(Photo06)。

  • Photo06:とりあえず現状は評価のみ

    Photo06:とりあえず現状は評価のみだが、将来的には購入まで可能にしたいという話であった

これは何かと言えば、例えばIntelのパートナーが提供するさまざまなソリューションをエンドユーザーが「評価したい」という場合であっても、従来であれば個別に契約を結んで、必要なら支払いを行ったり、各種の手続きをしたり…という手間が掛かっていた。これを一元化するのがWorkload Storefrontで、パートナーのソリューションの評価に必要となる手続きをすべてこのStorefrontからまとめて行えるようになり、迅速に評価を行えるようになる、という話である。

最後が、HPEのサーバで、このStratix 10 PACを搭載した形のソリューションが提供予定とされるという話である。別にHPEの独占提供という訳ではなく、最初に名前が挙がったのがHPEということらしい。提供予定時期は未定(HPE側が予定を決めるので、Intelとしては言及できない)という話だが、おおむね来年前半になるだろうとの事であった。