三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のカブドットコム証券は8月7日、MUFGが掲げる「デジタルトランスフォーメーション戦略」に沿い、kabu.com APIの基盤を刷新すると発表した。

kabu.com APIは、発注系、注文照会、残高照会、リアルタイム時価情報など、従来は証券会社ツールを介さなければ得られなかった情報をAPIとして提供している。

  • kabu.com APIの概要

新たなAPI基盤では、OAuth2.0認証方式によるセキュリティ強化と、ユーザーニーズの洗い出しとより活用しやすいAPIとなるべく改良を行い、Amazon Web Services(AWS)のクラウドサービス上にスケーラブルなシステム基盤の構築を実現した。

同社は、証券取引システムの大部分をデータセンターからインターネット接続回線まで含め、自社で構築し運用することにより、そのメリットを最大化してきたという。

しかし、優秀なIT人材の獲得がより困難になってきたほか、セキュリティの面でシステムに対する要請が高まっている課題が生じており、今回のシステム刷新では、各種課題の解決を踏まえたアプローチとして、AWSの採用を前提とした上でのシステム開発・実装・運用の最適化を視野に、コスト比較の試算を行った。

クラウド環境では、認証・認可やキャッシュシステムなどの機能が部品化され、運用管理された上で提供されていることから、実装に伴うコストやセキュリティのリスクへの対応コストが軽減されると試算したという。また、ハードウェアの調達にかかる初期費用に対するメリットも多く、以前なら1~3カ月程度必要となるハードウェアの調達・設置は瞬時で完了するため、初期費用は低減する傾向にあるとしている。

ランニングコストは、従来の自社運用による高いコストメリットを上回ることは難しいが、社内人員の技量や交渉力に依存する調達は不要になり、迅速なスケーリングを実現する体制が確保されたことで、可視化されにくいメリットを代わりに得ることができるという。

発表時点では、刷新プロジェクトの概況は試算に近い状況で推移しており、試算通りの成果を発揮することが期待できるとしている。

顧客サービス用のWebサーバやその他システムについても、移行できるものはクラウドファーストで刷新を計画しており、BCPとして大阪ローカルリージョンの利用を計画中だという。

  • APIシステム基盤環境別コスト比較