英国ロンドンに本拠を置く市場動向調査企業IHS Markitが、2017年の世界半導体産業の売上高の最終確定値を発表した。それによると、世界半導体産業の売上高は前年比21.7%増の4291億ドルとなり、14年ぶりの高成長を記録したという。

2017年に前年比53.6%増と大きく成長し、史上最高の半導体売上高を達成した韓Samsung Electronicsが、長年トップに君臨し続けたIntelを追い抜き、半導体産業の新しいマーケットリーダーに躍り出た。また、メモリ価格高騰の勢いそのままに、前年比8割前後の成長率を遂げたメモリメーカーの韓SK Hynixと米Micron Technologyもそれぞれ3位、4位にランクインした。

  • 2017年の世界半導体企業ランキング・トップ10

    2017年の世界半導体企業ランキング・トップ10。表の左端から2016年順位、2017年順位、企業名、2016年売上高(単位:百万ドル)、2017年売上高(単位:百万ドル)、2017年の前年比増減率(%)、2017年の市場シェア(%)、1位からの累積市場シェア(%)。最終行は、世界半導体産業総計値 (出所:IHS Markit)

IHS Markitの半導体サプライチェーン・アナリストであるShaun Teevens氏は「2017年は非常に記憶に残る年だった。業界が20%超の記録的な成長を遂げた上に、Intelが25年間市場に君臨してきたトップの座をSamsungに譲ったからである」と語っている。

またQualcommの買収を仕掛けたものの、米国大統領令の発令によりその買収が阻止されたシンガポールBroadcomは、僅差ながらそのQualcommを追い抜き5位にランクイン。一昨年13位だったNVIDIAも、PCゲーム分野からデータセンターやAI、自動運転、仮想通貨マイニングなど幅広い分野でのGPUの活用が進んでいることから、同42.3%増の85億7800万ドルでトップ10入りを果たした。

DRAM市場は前年比77%増、NANDは同47%増

2017年の半導体メモリ市場の規模は前年比60.8%増となり、内訳としてDRAMが同76.7%増、NANDが同46.6%増となった。これは、DRAM、NANDともに過去10年間で最も高い成長率だという。増収の大部分は、需要増加に伴う価格の高騰によるところが大きい。SK HynixとMicronは、DRAM生産に注力し、前年比で同81.2%と同79.7%の増収を記録したが、 NAND一筋の東芝は同19.8%増に留まった。Teevens氏は、「需要が高く、高い価格を維持したメモリ市場が、DRAMビジネスに注力した企業の堅調な成長に寄与した」と述べている。

DRAMに比べて成長率が低かったNANDだが、「2D NANDから3D NANDへの技術移転が手間取ったため、2017年は需給のひっ迫が生じ価格を上昇させたが、2018年に入り、3D NANDへの移行が生産総ビット数の約4分の3に達し、歩留まりも向上してきたこともあり、やや供給過剰ぎみの感から、価格は下落し始めている。しかし。SSDおよびモバイル市場からの強い需要は継続しており、それに併せてデータセンターやPCのSSD化も進み、スマートフォンの記憶容量も増加傾向にあることから、2018年は2017年以上に成長の可能性があり、市場規模として過去最高を更新する可能性が高い」とIHS Markitのメモリおよびストレージ担当シニアディレクターであるCraig Stice氏は述べている

メモリを除いた成長率は9.9%

価格高騰のメモリを除けば、残りの半導体分野の成長率は9.9%で、2桁成長には届かなかった。この需要を下支えしたものは、売上数量の増加と、すべてのアプリケーション、地域、およびテクノロジーに対する需要の高まりによるところが大きい。特に、データ処理アプリケーションに使用される半導体は、同33.4%増となった。Intelはこのカテゴリで今でも市場リーダーであり、この分野の売り上げは2位のSamsungに比べて2倍ほど大きかった。

なお、トップ10社の売り上げだけで、世界市場の約6割を占める規模となっている。

日本勢は世界半導体企業ランキングトップ10に1社のみ

世界半導体企業ランキングのトップ10にランクインしている日本勢は、東芝のみである。IHSに日本企業の情勢を確認したところ、日本の半導体企業トップ10は以下のとおりとなった。

2位は、車載半導体が好調のルネサス エレクトロニクス、3位は、CMOSイメージセンサで世界トップのシェアを誇るソニーセミコンダクタソリューションズとなった。日本勢の順位は、2016年に8位であったソシオネクストと9位であったパナソニックが、入れ替わっただけで、その他の変動はなかった。

なお、メモリ価格の歴史的高騰の恩恵にあずかった日本企業は、ランキング1位の東芝だけのため、世界の半導体企業ランキングに見られたような大きな順位変動はなかった。

順位 企業名2 前年比増減率(%)
1 東芝 19.8%
2 ルネサス エレクトロニクス 22.3%
3 ソニーセミコンダクタソリューションズ 31.2%
4 ローム 13.2%
5 日亜化学 -0.3%
6 三菱電機 6.4%
7 サンケン電気 5.2%
8 パナソニック 0.6%
9 ソシオネクスト -10.3%
10 富士電機 6.9%
2017年における日本の半導体企業ランキング・トップ10 (出所:IHS Markit)