インターネットイニシアティブ(IIJ)は7月19日、都内で記者会見を開き、各種デバイスのセンサー情報の収集から蓄積・可視化、制御・管理の自動化まで、IoTシステムに必要な機能を一本化したクラウド上の共通プラットフォーム「IIJ IoTサービス」を11月から提供開始すると発表した。価格は未定だが、2020年に売上高100億円を計画している。
新サービスはモバイル接続や認証、クラウド、既存システムとの連携など、IoTに必要な機能と、統合的な管理機能を提供するため、ユーザーは必要な機能をメニューから選び、IoTシステムを構築・利用することができる。特にデバイス、ネットワーク、クラウド間の接続や設定が自動化されるため、接続デバイスの増加に伴う作業負荷を軽減し、初期導入費用の投資や運用負荷を抑制しつつデータ活用による新たなビジネス開発に集中できるという。
また、MVNO事業者としての強みを生かし、低価格かつ大規模利用にも対応できる閉域モバイルネットワークを提供する。モバイル環境のほか、企業WAN接続やクラウド環境への閉域接続に加え、同社が有するネットワーク運用ノウハウや先端ソフトウェア技術を活用した高度なネットワーク・セキュリティ環境を実現する。加えて、各センサーから収集されるデータに対し、あらかじめ設定したルールに応じて機器の制御を自動実行する機能を提供する。
IIJ クラウド本部ビッグデータソリューション 課長の岡田晋介氏は、新サービスについて「これまでのIoTサービスはプラットフォーム機能やネットワーク機能などを単体で販売しており、それらをインテグレーションで使用するのが一般的な利用方法となっているが、われわれのサービスでは必要な機能を一体的に提供していく。ポイントとしては、ビジネスに集中できるフルマネージドサービスであるとともに、重要かつ膨大なデータを守るために堅牢なセキュリティと多様なネットワークサービスを提供し、爆発的に増大するデータやデバイス管理を自動化する点」と述べた。
新サービスはコネクティビティとプラットフォーム、機器の3つの分野でサービスメニューをそろえる。プラットフォームは、IIJの独自開発ルータのSEILやSMFの技術で培ったマネジメント機能を集結し、一体化したIoTに適したフルマネージメント機能を提供するほか、独自開発のデバイスエージェントにより、設定更新などのリモート管理とデバイス制御の双方向通信機能を提供。また、電力事業の技術を応用したリアルタイムデータ可視化機能とビッグデータ技術実績を組み合わせた予兆監視・自動制御を提供する。
コネクティビティについては、キャリア相接帯域を有効活用したIoTに適したモバイル環境や、独自開発のSDN(Software Define Network)技術と仮想化技術を生かしたネットワークであるAny Networkを提供する。機器(デバイス)に関してはIoT対応のゲートウェイ機器を開発し、ラインアップの拡充を進めており、レンタルまたは販売を想定している。
岡田氏は「2016年はトライアル用途向け機能を中心に提供し、2017年以降はエンタープライズで本格的に利用するための機能を拡充する。その後は膨大なデバイスを自動で管理すための機能を提供していく。われわれが考えるIoTの将来は低レイテンシでリアルタイムの処理が肝となるため、自律分散型クラウド基盤の実現を目指すほか、アナリティクスによる制御・管理自動化に取り組む。さらに、ソフトウェアSIMや独自モバイル網の構築も図る」と説明し、今後の製品展開に期待を寄せた。
11月のサービス開始時、プラットフォームはアプリケーションやクラウドへのデータ転送を行う「データハブ」、ストレージへの格納とデータアクセス画面・APIを提供する「データストレージ」、データ可視化・ビッグデータ解析(2017年提供予定)を担う「データビジュアライザー」、コネクティビティはモバイル接続、機器では「デバイスゲートウェイ」の各機能の提供を開始する。
その後、2017年以降にプラットフォームはデバイスゲートウェイ機器の監視・管理、リモート設定更新を実施する「デバイスマネジメント」、デバイス制御、状態通知、自動管理する「デバイスコントロール」の提供を予定。
さらに、コネクティビティは顧客専有型のモバイルネットワーク接続の「プライベートモバイル接続」、顧客環境とのWAN・VPN閉域接続の「エンタープライズ接続」、Azureをはじめとした外部クラウド閉域接続の「クラウドエクスチェンジ」、機器ではリモートメンテナンス、双方向通信プログラムを行う「デバイスエージェント」の提供を予定している。
IIJ 代表取締役会長 CEOの鈴木幸一氏はIoTに対して同社が貢献できることとして「近年、あらゆる日常がネットワークとビッグデータ処理の流れの中にあり、われわれができることはネットワークのレイテンシを短く、安全なものとすること。現在のレイテンシは50ミリ秒や100ミリ秒だが、将来的には2ミリ秒までの速さに達することが必要とされている。これまで、ネットワーク技術の開発に長年取り組んでおり、今後のIoTにとってわれわれができる役割と、IoTに対してどのような戦略で立ち向かい、技術開発を進めるかということを明確にしていく」と強調した。
IIJ クラウド本部 副本部長の染谷直氏、は同社が目指すIoTの姿について「コンセントにつなぐようにデバイスをネットワークに接続でき、ネットワークやクラウドを意識せずにIoTビジネス開発へ注力できるIT環境、IoTを開発できる環境を提供する。また、閉域モバイル接続など高度なネットワーク・セキュリティ機能を有するネットワーク、デバイスにエンベデッドな通信モジュールと分散型クラウドデータセンターによる超低レイテンシな高速アナリティクス環境の提供を目指す」と語った。