EMCジャパンは7月2日、EMCコーポレーションが実施した「オンライン環境における消費者のプライバシーに関する調査 : EMC Privacy Index」の結果を発表した。同調査は、世界15の国と地域に住む1万5000人の消費者を対象に行ったもの。消費者の半数が、プライバシーを犠牲にしたうえに成り立つ利便性に価値を置かないことが明らかになったほか、自発的にプライバシー保護対策を行っている人の割合は、日本人が最も低いという。

EMCジャパン マーケティング本部 フィールドマーケティング部長 渡辺浩二氏

EMCジャパンは同日に、記者会見を開催。最初に登壇したEMCジャパン マーケティング本部でフィールドマーケティング部長を務める渡辺浩二氏は、「(同調査は)EMCの製品に紐付けた内容ではなく、消費者目線でのプライバシーに対する基礎情報となる。この調査結果を見て、企業やメディア、消費者自身がどう感じるのか。プライバシー保護に関しての議論が活発になることを願っている」とした。

同社は、今回の調査の特徴の一つとして、「世界で同一の質問を問いかけたことで、地域や国民性の違いが浮き彫りになった」という点を挙げる。

調査対象となったのは、日本や中国、インド、オーストラリア/ニュージーランド、英国、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、中東(UAE・サウジアラビア・カタール)、ロシア、ブラジル、メキシコ、米国、カナダといった15の国と地域。各地域から年齢層のバランスを考慮した1000人ずつの合計1万5000人に対し、インターネットを利用して調査を行ったという。

なお、同社はEMC Privacy Indexの実施にあたり、行動別に6パターンの消費者のペルソナを作成。調査対象者が回答する際に、質問ごとに各ペルソナになりきってもらうことで、消費者の行動や活動内容でのプライバシーに関する意識の違いを明確にする狙いがあったようだ。

EMCが定めた6つのペルソナ概要

3つのパラドックス - 「すべてが欲しい」「何もしない」「ソーシャル環境での共有」

EMC Privacy Indexによると、消費者のプライバシー意識には「3つのパラドックス(矛盾)」があるという。

1つ目のパラドックス「すべてが欲しい」

1つ目は、「すべてが欲しい」のパラドックスで、消費者がデジタル技術の利便性に価値を置く一方、その代償にプライバシーを犠牲にすることは避けたいと思う傾向があることを指す。

このパラドックスを裏付けるのは、「デジタル技術による『情報や知識へのアクセス性の向上』に価値を置いているか」という質問に、はい」と答えた消費者は91%であったことに対し、「インターネットのメリットと引き換えにプライバシーを犠牲にしても良いか」という質問には、51%の消費者が「いいえ」と回答していることだ。

国別の考察では、利便性の代償にプライバシーを犠牲にできるとした割合はインドが最も高く、できないと回答した割合(40%)を超える48%の人が犠牲にできると回答している。

2つ目のパラドックス「何もしない」

2つ目は、プライバシー保護の重要性を認識している一方で、自発的な保護対策を行っていない、もしくは行政や法人に期待している「何もしない」のパラドックスだ。

回答者の半数以上(54%)が何らかの形でデータへの不正アクセスを経験しているにも関わらず、パスワードの定期的な変更といったプライバシー保護のための対策を行っていない割合が高いほか、行政や企業の対応不足との認識があることが明らかになったという。

3つ目のパラドックス「ソーシャル環境での共有」

3つ目の「ソーシャル環境での共有」のパラドックスは、ペルソナ別でのアンケート調査によって浮き彫りになった結果だ。

ソーシャルユーザーとして、「個人データの保護において、これらの組織のスキルを信頼しているか」という質問には「いいえ」が49%、「これらの組織の倫理観を信頼しているか」という質問には「いいえ」が61%と、比較的信頼度は低い。その一方で、情報の発信・共有が盛んに行われていることを矛盾であると同社は説明した。

EMCの提案

EMCジャパン RSA事業本部 マーケティング部部長 水村明博氏

Privacy Indexの結果説明を行ったEMCジャパン RSA事業本部でマーケティング部部長を務める水村明博氏は「個人データの利用に関する責任は、すべてのインターネット利用者(企業や行政、個人)にある」と話す。

その上で、消費者は「自分のプライバシーは自分で守る(プライバシーに関する話題にアンテナを張り、自分独自のプライバシーの境界線を決めるための行動をとる)ことが必要」(水村氏)とした。

また、日本だけの調査結果をみると、自発的にプライバシー保護対策を行っている人の割合は最も低い結果となっている。たとえば、「ソーシャルネットワークに登録する場合はプライバシー設定をカスタマイズしている」とした割合は50%、「(スマートフォンやタブレットなどの)モバイルデバイスをパスワード保護を行っている」とした割合は36%、「定期的にパスワード(全般)を変更している」とした割合は23%と、すべての項目で15カ国中最下位であった。

最後に水村氏は「行政や企業がプライバシー保護に関して取り組む必要性はもちろんのこと、やはり消費者自身も積極的に考えていく必要性がある」とし、プライバシー保護に対する消費者の自発的な対策への期待を強調した。

EMC Privacy Indexの日本における調査結果