一方、Tizen Associationのボードメンバーであり、国内への端末投入を予定しているNTTドコモは、Tizenにどういった期待を寄せているのか。プロダクト部 技術企画担当課長の的場 直人氏、マーケティング部 プロダクト戦略担当主査の浜田 尚氏に話を聞いた。

新たな付加価値の提供

Tizenは現時点で製品がなく、まだエコシステムができていない。ドコモは最初に製品を供給して、1つのプラットフォームとして「育てていきたい」と的場氏は語る。

インテルと同様に、ドコモもアプリ開発の中心は今後、HTML5になっていくと考えており、それがきちんと動作できる最適なプラットフォームとして、Tizenを成長させていきたいという。

ただ、ドコモとしては「TizenというOS」自体を訴求するわけではないようだ。スマートフォンでは、ハードウェアの性能、デバイスそのものが持つ魅力、アプリ、UI、ボタンなど、さまざまな違いがある。OSはそういったスマートフォンを構築する一つの要素であり、「OSが異なるとガラッと変わる」(的場氏)わけではないという。

ドコモが期待しているのは、OSが変わることで、「ユーザーに対して付加価値を提供できるのではないか」(的場氏)という点だ。iOSはもとより、Androidに比べても自由度の高いTizenによって、新たなUIやアプリ、新サービスの登場に期待しているという。

NTTドコモ プロダクト部 技術企画担当課長 的場 直人氏

的場氏は所有PCにTizenロゴを貼るなど"Tizen愛"に溢れていた

ハイエンドなTizen端末を投入

このエコシステムに重要なのがアプリ開発者の存在で、TizenではHTML5とネイティブアプリの双方が扱える点がドコモにとっても大きなポイントと考えている。特に、Web開発者やWebデザイナーが参入できることで、「開発者はけた違いに多くなる」と的場氏。

そうしたWeb開発者の「アイディアやセンスを生かしたアプリが出てくる」ことを期待するとともに、ハイブリッドアプリによって、既存のアプリでもWeb開発者のUIやデザインを盛り込めるようになるという強みもある。また、HTML5アプリがそのままiOSやAndroidも流用できることで、「開発者の負担も軽減できるのではないか」(浜田氏)という期待も寄せる。

こうしたアプリの普及促進を図るため、ドコモではアプリストアの「Tizen Store」と密に連携していくという。Tizen Storeでは、課金や料率などの点で「デベロッパーに対してできるだけやさしく、審査が早いなどのメリットがある」(浜田氏)としている。

マーケティング部 プロダクト戦略担当主査 浜田 尚氏

まだアプリ数が少ないため、掲載すれば目立つというのはメリットで、逆に言えばそれがデメリットでもあるが、既存のアプリストアについて「よく勉強して、良さを生かして悪いところを直そうとしている」(浜田氏)という。

ドコモでは、まずどういった端末を提供するのか。具体的な話は明らかにされなかったが、「日本市場はハイエンド市場しかない。従来と同じようなレンジで提供することになる」と的場氏は語った。