第3回となる「スマートフォン&モバイルEXPO 春」が、2013年5月8日~10日、東京ビッグサイトで開催された。さまざまな企業がアプリやサービスを紹介し、多くの来場者で賑わった。その中でも注目を集めていた「スマートフォン研究会」のブースについて紹介しよう。

スマートフォン研究会のイベントブース

スマートフォン研究会は、開発会社が会員となり、研究会やセミナー、交流会などを通じてスマートフォンビジネスのノウハウを共有し、販売をサポートするプログラムである。発足者であるアイエンターの代表取締役 入江恭広氏は、次のように語っている。

「当社がスマートフォン研究会を立ち上げたのは、2年ほど前のこと。スマートフォンアプリは100万~400万円程度で安価に開発できるため、小規模な企業がビジネスに参入しやすいという特徴がある。しかし当時は、IT業界全体の景気がやや冷え込んでおり、小さな組織が個別に開発をやっていたのでは苦しい状況だった。そこで、開発会社どうしでタッグを組んで、大手に対抗すべきだと考えた。1年目は技術の共有が主な活動だったが、2年目以降は販売代理店網を作ることにも注力している。小企業は大規模な企業と異なり、営業に多数の人員を割けないケースが多いためだ」

今回共同で出展したのは、アイエンター、アイ・ティ・ネット、アンブルーム、エス・ジー、ユーザック システムの5社だ(50音順)。各社のサービスやアプリについて紹介しよう。

-「絆BOX」アイエンター

アイエンター 代表取締役 入江恭広氏

最近は安価なクラウドストレージサービスが増えたが、セキュリティ上の懸念から、こうしたサービスを容易に許可できない組織は少なくない。絆BOXは、そういったクラウドストレージの懸念点を払拭した企業向けの"セキュアクラウドストレージ"だ。

まず通信回線のSSL暗号化によって、データの盗聴や改ざんを防止する。ファイルはウイルススキャンにかけられ、マルウェアなどが企業内に侵入することを阻止する。特に有効な機能がアカウント管理とアクセスログ管理だ。スマートデバイスを紛失してしまっても、個々のアカウントをすぐにロックすることができる。ロックするまでの時間が遅れても、アクセスログでセキュリティ侵害の事実を把握することができるため、もしもの時のインシデント対応に役立つ。

サービス利用にかかる費用は、30GBで月額4,980円からだが、アカウントの発行は"無制限"である。つまり、組織に何人いようが容量を共同利用できるということだ。オプションで企業間の共有フォルダを作成したり、バックアップサービスを付与したりすることも可能である。

-「選挙のアプリ」アイ・ティ・ネット

アイ・ティ・ネット 代表取締役 小野良勝氏

公職選挙法が4月19日に改正され、インターネットを利用した選挙運動が解禁された。これにより、多くの候補者が電子メールやWebサイトやSNSなどを用いて有権者に自身をアピールするようになってきている。この活動を強力にサポートするのが「選挙のアプリ」だ。

今やFacebookは重要な選挙ツールの1つとなっており、使いこなす候補者も増えてきた。しかし、Facebookは会員サービスであるため、ログインしなければコンテンツを閲覧することができない。また個人の「友達」は5,000人までに限定されているため、より多くの有権者に活動を伝えることができない。

選挙のアプリは、Facebookをプラットフォームとするユニークなアプリで、Facebookユーザーでなくても、視聴したいテキストや動画などを閲覧できる。有権者にはアプリのダウンロード元を教えるだけで、コンテンツ管理ツールなどを操作する必要はなく、いつものようにFacebookを更新すれば自動的に活動内容を伝えることができる。

-検定普及促進アプリ「検定ちゃん」アンブルーム

アンブルーム 代表取締役 矢作保氏

従来から、Webサイトやスマートフォンアプリを用いた検定クイズはユーザーにとってなじみのあるコンテンツの1つだ。簡単に短時間で楽しめるだけでなく、知識欲を満たすことができる点も魅力だ。

最近では、企業にとってもサービスや製品、ブランドをアピールするための重要なコンテンツの1つとして、様々な方面から注目されつつある。しかし、アプリの開発はもちろん、クイズそのものの作成にも労力を必要とするため、二の足を踏んでいる組織も多いようだ。

アンブルームは、クイズの作成からアプリの開発まで一手に引き受けるサービスを提供している。企業側は、クイズにしたい"ネタ"を提供するだけでよい。ベースアプリは同社のテンプレートが用いられ、デザインも任せることになるが、そのぶん費用がぐっと抑えられている。初期費用は5万2,500円、月額費用は4,900円で、iOS/Androidに両対応するプランも用意されている。なお、性格などを診断するアプリの制作サービス「診断ちゃん」も提供されている。

-「AR time(エーアールタイム)」 エス・ジー

エス・ジー 事業企画室 営業主任 山口かおり氏

スマートフォンの普及で広がったものの1つが「AR(拡張現実)」である。よく目にするのは、アプリのカメラをトリガーとなる"ARマーカー"にかざすと、画面上にさまざまな追加情報が表示されるものである。

AR timeもそうしたアプリの1つであるが、ARマーカーを必要としないマーカーレスタイプである点が特徴だ。既存のチラシやポスター、カタログ、商品パッケージなどあらゆるものをマーカー代わりに利用することができる。アプリに利用する画像と、AR認識のための画像、コンテンツとなる動画やWebサイトのURLを用意するだけでよい。

O2Oマーケティングに必要なユーザーの行動分析の機能を備え、集計結果をマップと連動させた地域情報も得ることが可能だ。 複数のAR画像が登録でき、それぞれに対して動画やWebサイトの閲覧状況が確認できるため、戦略的なマーケティングにも対応することができる。iPhone/Androidのアプリをそれぞれ1つ制作しても初期費用は5万円と安価。 合わせて、ARの登録や集計結果を閲覧するための管理画面運用費として月額3万円となっている。

-「Pittaly(ピッタリー)店舗発注」 ユーザック システム

ユーザックシステム モバイルソリューション推進部 取締役部長 小ノ島尚博氏

従来から、店舗における商品の発注管理はFAXやパソコンを用いて行うことが一般的である。ところが、百貨店やイベント会場に設置された店舗は小規模で狭く、ノートブックPCを設置する場所すら惜しいというケースも少なくない。そこで活躍するのが、スマートフォンから商品発注をすることができるPittaly店舗発注である。

Pittaly店舗発注はiPhoneアプリとして提供され、ユーザック システムが提供するPittalyクラウドサービスに接続して利用する。iPhoneに対応したバーコードスキャナーも利用できる。本部では、各店舗の発注データをCSVで一括管理できるため、基幹システムとの連携も容易だ。

初期費用は5万2,500円だが、導入事例として社名を公開できれば"無料になる"お得なプランも用意されている。アプリの利用は無料で、メールによる発注や管理などの単独利用は自由にテストすることができる。クラウドサービスとの連携は、一台あたり月額2,100円(1~50台)、51台目以降は1,050円。なお、このアプリ及びサービスは6月下旬のリリースを予定している。

スマートフォン研究会の今後の展開として、入江氏は海外展開をあげる。「スマートフォンアプリは海外ユーザーも容易に購入できることが魅力で、積極的な展開で成功している企業もある。しかし日本企業は、この部分が弱点であることが多い。そこで今後は、海外の販売代理店網の構築にも注力していく」と言及している。