IT機器の保守サービスに変革の波が押し寄せている。これまで、サーバ/ネットワーク機器を導入した企業が保守サービスを受けようとすると、「購入元ベンダーと契約する」という選択肢しか残されていなかった。そのため、ハードウェア購入と保守サービスは実質セット。保守サービス料も含めて購入費用を見積もる必要があるというのが、インフラ管理者の常識だろう。

データライブ 代表取締役社長の山田和人氏

しかし、最近はそうした状況も変わり始めている。リユース機器を扱うデータライブのような、第三者にあたる企業が独自の保守サポートを展開しはじめているのである。

では、第三者保守サービスにはどういったメリットがあるのか。データライブ 代表取締役社長の山田和人氏の話から探っていこう。

10年稼働のサーバにも安心を与える新領域のサービス

データライブは、「システムを延伸稼働させる専門企業」である。HP、Oracle(Sun)、Dell、Cisco Systemsといった海外ベンダー製品を中心にサービス展開をしている。

保守部品については、幅広い世代、メーカーに対応できるようにサーバ、ネットワーク機器やそのパーツが自社倉庫にストックされていることと、ワールドワイドな調達網を活かし、国内にはない古い世代のパーツも取り寄せられるため、ベンダーのサポート対象期間から外れたEOSL(End Of Service Life)製品もサポートできるといった特徴がある。10年稼働機器の面倒を見られる数少ない企業として、システム運用者から厚い信頼を寄せられている。

では、ベンダー純正ではなく、あえて同社の保守サービスを選ぶのはどういった要望を持つ企業なのか。山田氏は「企業によってさまざま」と前置きしながらも、特に要望の多い例として「システムの延伸」と「マルチベンダー環境のワンストップサービス」を挙げる。

「当社の事業内容からも想像がつくかもしれませんが、多いのはやはり『システムの延伸』ですね。マシンパワーを上げる必要もなく、とにかく長期間稼働させなければならないシステムというのは少なくありません。そうしたシステムでは、ハードウェアがEOSLになったからと言ってリプレースするわけにもいきませんので、当社のサービスをご活用いただくことが多いです」(山田氏)

システム延伸が求められる例としては、サーバのEOSLを迎えるにあたってリプレースに着手したものの、開発の遅れなどでサポート対象期間外も旧システムを稼働させなければならないケースが挙げられる。サポートの隙間を埋めるために短期サポートをお願いされることがあるという。

そのほか、「同じシステム内で導入時期が異なる機器のサポート契約更新タイミングを揃えるために、短期的に当社と契約する」(山田氏)というケースや、減少傾向にありながら契約者が存在するため終了できないサービスなどからも声がかかることが多いようだ。

いずれもこちらのニーズは、通常の保守サービスでは対応できないもの。「これまでは保守サポートの契約を諦めざるをえなかった部分なので、お客様からは喜んでいただいています」(山田氏)。

データライブ倉庫の様子

検証作業の様子

マルチベンダー環境に対応! 障害切り分け前に問い合わせが可能

もう1つ、同社保守サービスが求められるシーンとして山田氏が挙げたのが「マルチベンダー環境のワンストップ対応」だ。

「大手企業の基幹システムとなれば話は別かもしれませんが、中堅以下の企業や部門で独自に運用しているようなシステムになると、さまざまなベンダーのサーバやネットワーク機器を混在させて運用しているケースがほとんどです。その際、ベンダーごとに純正の保守サービスを契約すると、障害が起きた際、どの製品で障害が起きたのかを切り分けたうえで、該当ベンダーに連絡しなければなりません。これでは運用担当者の負担が大きいうえ、復旧までに時間もかかります。こうした問題を解消したいというお客様は非常に多いです」(山田氏)

マルチベンダー環境では、「障害時の問合せでたらいまわしにされた」という話は少なくない。特にサーバとネットワーク機器の切り分けが難航し、この作業に数時間を費やすケースも珍しくない。

こうした問題も、ベンダーを跨ってサポートする保守サービスがあれば解消される。簡単にできる話ではないが、普段からさまざまな製品を扱うデータライブであれば対応可能なのである。

「保守サービスを契約するお客様は、何かあったときに助けてほしいからお金を払ってくださるわけです。にもかかわらず、いざというときに『問題個所を特定して、当社の管理する機器に問題が見つかったら改めてご連絡ください』とお答えしていては、お客様からの信頼を裏切ることになりかねません。こうした問題を回避できる点は、当社の大きな強みと自負しています」(山田氏)

前述のとおり海外ベンダー製品を中心に取り扱ってきたデータライブだが、先日、新たに富士通サーバー(PRIMERGYシリーズ)およびNECサーバー(Express5800シリーズ)のx86機もサポート対象に加えることを発表した。これにより、「国内で販売されているサーバの約80%をカバーできる」(山田氏)ことになる。多くのシステム現場をワンストップでサポートできる環境が整ったようだ。

対応の速さも第三者保守サービスの特徴

そのほか、山田氏は、第三者保守サービス本来の特徴としては「対応の迅速さ」もあると付け加える。

「海外では、対応の速さを売りにする第三者保守サービスも多いようです。しかし、国内では短時間サポートサービスをオプションで提供しているベンダーが多いので、そこでの差別化は難しいのかもしれません。ただし、そうしたベンダーさんと同じ速さで、マルチベンダー環境をサポートできるという点は、お客様からもご評価いただいています」(山田氏)

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これまで選択の余地が少なかった保守サービスに、新たなオプションを追加するデータライブ。ユーザー企業にとってこのインパクトは非常に大きい。

現在、保守サービスが契約切れを迎える際には、「クラウド環境への移転」もしくは「システムのリプレース」で検討する企業が多いと思うが、ここに「システムの延伸(EOSL保守サービス)」という選択肢が加わったわけだ。これにより、システム維持の選択が広がり、より戦略的なIT投資が行える環境ができてきたと言える。

なお、データライブの富士通(PRIMERGYシリーズ)EOSLサーバ保守は3月から、NEC(Express5800シリーズ)EOSLサーバ保守は7月から開始される予定。HP-UX機器(HP9000シリーズ、HP Integrityシリーズ、日立 HA8500/9000vシリーズ、NEC NX7700i/NX7700/NX7000シリーズ等OEM機器)についても現在サービス拡大中である。該当製品を扱うシステム運用者は、こうした情報も頭の片隅に入れておくとよいだろう。