実際に筆者が小規模事業主として事業を続けている経験から、いくつか感じている点があるので、ここで挙げておこう。

まずは入金管理に関してだが、受注があり納品して請求、そして入金となるのだが、実際に振り込まれる金額に差があるケースがある。傾向としては2つあって、ひとつは振込料を差し引かれているタイプと、消費税を内税換算されているタイプだ。これはもう、取引先の事業形態によるとしか言いようがないが、小さい事業をしていると割とよくある事だ。

これを回避するには事前に取引先とよく話し合っておくほかはない。切り出しずらいのであれば、「請求書の発行タイミングと入金までの期間を教えて欲しい」などと言ったついでに「振込料金はどうなりますか?」などと話してみるといいだろう。

また、内税にされて困るケースはこちらが消費税の納税をしていることが大前提となる。取引先からみればこちらが小規模事業主であることから、消費税納税義務が無いと思い込んでいるケースが考えられるので、課税売上高で1,000万円を超えているならば相手にしっかりと「消費税納税業者」であることを告知しておくことが大切だ。

また、これはどんな事業形態でもそうだが、企業間取引とはいえミスは必ず発生すると思っておいた方がいい。ただし、半年も経ってから「あの時の入金金額はおかしい」と言ったところで、相手からは常識に欠けると思われる可能性はある。信頼関係に影響が出てしまうおそれもあるので、請求書と取引先からの入金はきちんと紐づけて管理しておくべきだし、なるべくリアルタイムでお互いにミスを発見し合うぐらいの気持ちでマメなチェックをしておいたほうが良いだろう。

そうしたことを考えると、銀行口座の管理はオンライン化しておくほうがよい。 申告ソフトには、「Money Look」と連携することができるものもある。

利用方法だが、Money Lookに事業で使っている口座を登録しておき、それを随時申告ソフトにダウンロードしておけば、口座の管理は断然楽になるはずだ。SOHOや個人事業主は一番忙しい社員も兼ねているので繁忙期には、ついつい経理から足が遠のいてしまう。そんなときでも、オンラインなら15分もあれば銀行口座の出入金の流れが確認できる。口座のマメなチェックは事業の健康診断にもなるので、ぜひオススメしておきたい。

パーソナルファイナンスサービスMoney Look。複数の銀行口座をトータルで管理したり、資産管理や口座管理を的確にやりたい人向けのコンテンツだ

「やよいの青色申告」の場合は、「ファイル」メニューから「銀行明細の取り込み」→「Money Lookを起動」と進むと「Money Look for 弥生」が起動する。オリジナルのMoney Lookで使っているIDやパスワードを入力して先へ進むと、銀行口座明細の取り込みなどが行える(※事前にインストールDVDからオプションとして「Money Lookのインストール」を実行しておくこと)

申告ソフトを開くと、指定した期間のデータが取り込まれているのが分かる。銀行のサービスによっては明細のダウンロードに期間が決められている場合があるので、事前に確認しておきなるべくマメにダウンロードしておこう(画面は「やよいの青色申告」の「預金出納帳」)

出金管理に関して、領収証をきちんと発行してもらうというのは先に述べたとおりだ。それ以外で注意したいのは交通費の管理だ。例えば都内の電車移動などは領収証が出ない。しかし、年間を通してみると意外と交通費はバカにならない額になっているケースは非常に多い。交通費はマメに入力していくことが望ましいが、それが厳しいのであれば、何月何日にどんな交通機関を使っていくら支払ったか、駅名や目的を含めてメモをしておくと後で思い出しやすくなるので安心だ。

また、車移動が多ければ、車を事業所で買い取り、事業用途として使った場合はガソリン代も含めて計上することもできる。ただし、平日は事業用、休日は家族用などと使い分けた場合は、なるべく細かく切り分けるようにしておいたほうがよい。

例えば、●●インターまでの往復分のガソリン代と高速道路代は差し引いて計上するなどしておくのもひとつの方法。特にETCカードを使えば後からでも確認しやすいので、この切り分けはやりやすくなるはずだ。

いずれにしても、現金の支払いの部分はミスしやすいので、できる限りマメに記帳し続けることが大切になる。領収証は入力したら、ノートなどに張り付けて保管する癖をつけておくと2重入力などの凡ミスを防ぐことができる。入力の期間が長い人ほど、十分な領収証管理をしておくほうがよいだろう。

領収証はノートなどに張り付けて保管しておく。規定として7年間は保管しておかなければならないので、すぐに取り出せるように、月ごとに分けておくとよいだろう