ITへの依存度をますます高める中国銀行業界

結論としては、米国発の金融危機が全世界の投資と消費の足取りを鈍らせているが、中国のIT業界への影響はさほど大きくないと考えられる。金融危機により、銀行はITサービスキャリアに対し、データ管理、リスクコントロール、アウトソーシングなどのサービスにおいてさらなる要求を突きつけてくるだろう。だが、これらのサービスは元々中国IT企業の弱みと言え、大手外資企業が弱気になっている今のチャンスを利用し、自社の根本的なグレードアップを図るべきなのだ。

米国の金融業界が踏んだ跌を鑑(かがみ)に、中国の銀行業界は今後よりハイレベルの情報化を進めるであろう。これは、間違いなく中国国内のIT業界にとって得難いビジネスチャンスになる。理由は簡単。中国の銀行業界が、昨今ITへの依存度をますます高めるであろうからだ。

仮に中国が独自の金融秩序を持っていれば、米国の金融危機により中国の金融業界に倒産や吸収合併が突如起こることは少ないはずだ。しかも、中国の金融業界は、その事業発展のスピードと情報化の程度との間に大きなアンバランスがあるから、今後情報化のニーズは増えるものと考えられる。

グローバル市場で中国企業がトップになるチャンスにも

米中両国の市場は、それぞれ異なる消費構造を持っている。中国はハードウェア消費を主としているが、米国はむしろソフトウェアとサービスが主だ。この構造により、中国の輸出型ソフトウェア企業が軒並み業績不振に陥っている。

一方、中国のインターネット市場は相対的に独立しており、米国市場とは必ずしも強い関係性をもっていない。

したがって、米国の金融危機は、短期的に中国のIT業界に多少の影響を与えたとしても、長期的に見れば、中国のIT産業の発展を大きく阻害するものにはならないだろう。

逆に、今回の危機にうまく対処できれば、起業と投資の両面で、いい状況となる可能性すらある。

米国の多くのIT企業が金融危機の影響であえいでいるのとは対照的に、中国の資本力のあるIT企業にとっては、まさに「時機到来」である。なぜなら、目的の企業資産を買収できるチャンスが開けてくるからだ。ひょっとすると今回の金融危機により、携帯基地局メーカーの華為技術や中興通迅(ZTE)、PCメーカーの聯想(レノボ)が、グローバル市場でトップ企業になることもありえない筋書きではない。