毎年10月にドバイで開催される中東最大のIT展示会「GITEX 2022」の取材に行ってきました。中東といえばお金持ちというイメージがありますが、ドバイの展示会も資金力にモノを言わせて世界中から最新技術を集めてくる、そんな印象でした。今流行りのメタバース関連の展示も専用ホールで行われるなど、ドバイに行けば最新技術や「未来」を見ることができるのです。

  • VRアートのライブペインティングショー

メタバースの展示ホールではH&Mのバーチャル試着室やホログラムのサービスブースなどビジネス向けの展示も見られました。ステージではVRアートのライブペインティングショーも行われましたが、日本のVRアーティスト、せきぐちあいみさんが連日ステージにあがり仮想空間に壮大な3Dグラフィックをペインティング。この分野の第一人者として大きな注目を集めていました。

  • ステージでパフォーマンスを披露したVRアーティストのせきぐちあいみ氏

メタバースはまだ誰もが気軽に使用するサービスにはなっていませんが、仮想技術を使ったサービスはすでに実用化されているものもあります。たとえばバーチャル試着室をGITEXの会場でいくつか見かけました。鏡の前に立ち、鏡に投影されたサングラスや洋服をその場で自分の身につけて、身体を動かしてデザインを確認したり、気に入らなければジェスチャーで別のものに着替えることができます。バーチャル試着室は洋服をたくさん試着室に持ち込んで、さらに着たり脱いだりを繰り返す必要がありませんし、気に入った洋服が見つかればその場で画面のQRコードを自分のスマートフォンで読み取って購入することもできます。いずれ自宅からお気に入りの洋服ブランドを選んで試着する、なんてことも当たり前にできるようになるのでしょうね。

  • バーチャル試着室でサングラスやコートを試す

さてドバイでしか見られないような製品の展示もありました。中国Xpeng Aerohtの空飛ぶ自動車「Xpeng X2」です。2人乗りで8つのプロペラを備える電動駆動のVTOLで、1回の充電で45分、140kmを飛ぶことができます。自律運転に対応しているので将来は無人操縦タクシーも実現できるかもしれません。実際にGITEXの会期中にドバイの空で90分間の飛行テストも行われており、市販化も目前のよう。価格はかなり高いでしょうが、ドバイの富豪たちがちょっとした移動用に購入するでしょうね。

  • 空飛ぶタクシーにもなる「Xpeng X2」

GITEXの会場を歩いていると足元をいきなり駆け抜ける動物のようなロボットにも遭遇しました。中国Unitreeの四本足走行ロボットです。この手のロボットはいくつかのメーカーが製品化していますが、高額であることからなかなか導入しにくいところ。こちらのロボットは日本円で100万円台と比較的低価格ですし、会場を歩かせていれば「お、買おうかな」なんてその場で即決するドバイのお金持ちの人がいるかもしれません。

  • Unitreeの四本足歩行ロボット

一方、こちらの製品はノートPC。Getacの「X600」という製品で画面サイズは15.6型。最大の特徴は氷に浸けられていることからわかるように耐温性です。動作温度はマイナス29度からプラス63度、保管ならマイナス51度からプラス71度まで耐えられるとのこと。ドバイ郊外の砂漠の高温炎天下でも使えますし、一方で南極や北極などの極寒の地でも使える本格的なタフネスノートPCなのです。価格は80万円程度ですが、これもドバイなら「安い」なんて思われるのでしょう。

  • マイナス29度でも使えるノートPC

ところで昨今のロシア・ウクライナ紛争は世界に様々な影響を与えています。ロシアの企業も海外取引などを行いにくい状況になっているでしょう。GITEXの会場にはロシアの企業の出展も多く、モスクワゾーンのように複数社が出展しているエリアもありました。その中で見つけたのがSkyStreamのドローン「SeaDrone」。水上に浮かぶことができ、そのまま離発着もできるそうです。産業用途ですが沿岸地域などでは用途がありそう。しかし現在の社会情勢ではいい技術を持っている会社も政治的な問題で世に出るのは難しそうです。

  • 水面に浮かぶドローン「SeaDrone」

人々の生活がようやく正常に戻りつつある中で行われたドバイのIT展示会。ここ2年ほどは海外の大型展示会はのきなみ中止になり、新製品や新技術が出てきてもオンラインでしか見られませんでした。しかし新製品というものは実際にものを見たほうが感動や興奮の度合いも違いますし、使い勝手や完成度を触って試すこともできます。今回紹介した技術のうちいくつかは2、3年もしたら実際に市場で使うことができるようになっているのでしょうね。ドバイの空をエアタクシーで移動出来る日が来るのが楽しみです。

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