通信キャリアが提供するサービスはスマートフォンに留まらず、インターネットやショッピングなど幅広い分野に展開しています。海外では家庭向けのIPTV(ネットTV)サービスも主流で、通信キャリアはサービスだけではなく様々な機器も販売しています。家庭で使うそれらの機器が使いやすく、さらにデザイン性も高ければキャリアを選ぶ選択肢にもなるでしょう。

ドイツを中心に50か国以上で通信サービスを提供しているドイツテレコムはサステナビリティを意識して、「使いやすく、そして美しい」家庭用の通信関連機器のコンセプトデザインを海外で発表しました。いずれもシンプルで幾何学的な形状や個別のインターフェースを持っており、IT機器を冷たい物体から家の雰囲気にマッチした住人のパートナーに仕上げたそうです。素材も木や布、再生紙をベースにするなど、人の手にやさしいものになっているとのこと。

  • ドイツテレコムが新しい通信関連機器のコンセプトを発表した

ドイツテレコムのデザインチームとロンドンのデザインスタジオ「LAYER」がコラボレーションして発表したこのコンセプトコレクションは「WEBカメラ付きセットトップボックス&スピーカー」「ルーター」「メッシュリピーター」「セットトップボックス」「リモコン」の5製品。発表を行ったのは6月頭にイタリア・ミラノで開催されたデザインの祭典であるミラノデザインウィーク2022。通信キャリアもデザイン方面のイベントに参加する時代になっています。

  • 使いやすさとデザイン性を高めたコレクション

IPTVの普及が進んでいない日本ではセットトップボックス(STB)という名前はあまり知られていませんが、インターネット配信TVの専用チューナーという考え方がわかりやすいかもしれません。今回発表した製品はSTBにサウンドバーを合体させたもので、TVを接続してTV番組を視聴することが可能になることはもちろん、高品質な音で映画などを楽しめます。また前面は時計やチャンネルなどを表示できるようです。曲線で構成されたデザインは家庭のインテリアにもマッチし、黒一色の製品が多い他社のサウンドバーとは異なり、暖かみのある色合いに仕上げられています。

  • サウンドバーが内蔵されたSTB。WEBカメラは上にのせたり、別の場所に置くこともできる

このSTBとセットで使うWEBカメラは、カメラ部分が目立たないデザインになっています。STBを接続したTVはインターネットTVになりますから、このカメラを使ってビデオ会議などの利用も可能になるでしょう。またカメラは顔を追従してTVの前に座っている人の顔の方向を自動的に向くようになっているとのこと。

鏡のようなこのデバイスはルーターです。一般的なルーターは側面のLEDライトが常に点滅する四角い箱です。ドイツテレコムはルーターの表面を鏡面仕上げとし、ライトではなく文字として接続状況などを通知してくれる洗練されたデザインを採用しました。背面側はベルベット調の布で覆い、柔らかみを感じさせてくれます。

  • ルーターも鏡面仕上げで美しくした

さらにこのルーターは家庭内の他の部屋やキッチンなど、電波の届きにくいところをカバーするメッシュリピーターに最大6台まで接続できます。木製で円形のメッシュリピーターはまるで木の皿を展示しているかのような外観で、あえて見える場所に設置したくなるでしょう。

  • 木製のメッシュリピーター。IT製品とは思えない外観

なお木製の本体内にリピーターを内蔵しているだけではなく、ディスプレイ機能ももっており、通信状態を表示することもできます。

  • インテリアとして設置したくなるデザイン。ネットへの接続状況の表示もできる

そしてこちらは単体のSTBとリモコンです。STBにはインターネット経由でTVを視聴できる機能だけではなく、ドイツテレコムのスマートホームサービス「Magenta Zu Hause(Magenta at Home)」が利用可能です。これは家庭のスマート家電のコントロールや管理だけではなく、子供が帰宅するとそれを勤務先の親のスマートフォンに通知する、といったセキュリティー機能なども含まれているとのこと。STBをつないだTVの画面で家電の状態をチェックする、といったことが可能になるわけです。

  • 単体で利用できるSTBも円形でかわいらしいデザイン

リモコンはセラミック調の仕上げ。卵のような形をしており、人間工学に基づいたデザインになっています。手で持ってみると心地よい肌ざわりと握り心地を感じられそうです。

  • 人間工学に基づいたデザインのリモコン

さてドイツテレコムはこれらの製品だけではなく、ARを使った新しい製品パッケージプロジェクトも発表しました。オンラインショッピングで注文したルーターが家に届いたとき、梱包の箱を開け中を取り出した後に、説明書を読みながら四苦八苦するという経験は誰にもあるものです。ドイツテレコムはパッケージを「製品輸送の箱」ではなく、内容物の説明や接続方法といった説明書にもなるツールに生まれ変わらせようとしています。

  • 新しい製品パッケージ。上部にQRコードが印刷されている

自宅に製品が届いたら、まずはパッケージ上部にあるQRコードをスマートフォンやタブレットのアプリで読み取ります。するとARを使い、画面を通してパッケージの開封方法や中に入っているものが画像や映像としてパッケージの上に表示されるのです。これにより紙のマニュアルは不要になりますから環境にもやさしく、また別途ネットで説明書をダウンロードしたり操作マニュアルのビデオを見るといったことも不要になります。

  • 画面を通してARで開封方法や設定方法を教えてくれる

さらには開封時にキャンペーン情報を表示するなど、売り手と買い手に新しいコミュニケーションを提供する場にもなります。QRコードを印刷するだけで、パッケージが新しい情報ツールになるのです。

  • もうケーブルの接続や設定方法に悩むこともなくなる

通信キャリア同士の競争は年々厳しくなっています。通信サービスの内容だけでは差別化は難しく、スマートフォンの値引きも限界があります。これからの時代は「品質」や「料金」だけではなく、ユーザー視線に立った使いやすさや、環境への持続性を配慮した製品の展開が求められるようになっていくでしょう。

  • 通信キャリアにこの動きは広がっていくだろう